第380章 ママはパパの彼女2更(10)

「ちょっと待って。」

西村絵里は美しい瞳を見開き、黒田真一が大きな手で彼女の細い手首を掴み、エレベーターのドアを再び閉めるのを見た。

西村絵里が理由を理解する前に、黒田真一の磁性のある声がエレベーター内に響いた。

「甘奈、パパとママには少し話があるんだ……今、目を閉じて、それから小さな手で目を覆ってくれる?」

「うん……」

甘奈はすぐに素直に目を閉じ、小さな手で両目を覆った。

あら、パパとママは何をするのかな。

不思議だな。

西村絵里は黒田真一が何をしようとしているのか分からず、男性の大きな手から自分の小さな手を引き抜こうとしたが、あまり力を入れる勇気がなかった。黒田真一を引っ張り倒して、甘奈まで怪我をさせるのが怖かったからだ。

「黒田社長、何をなさるんですか?」

西村絵里が不安を感じていると、次の瞬間、男性が大きな手で彼女の後頭部を掴み、彼女を自分の胸に引き寄せるのを見た。

「んっ……」

西村絵里は目の前の男性を信じられない思いで見つめると、男性の端正な顔が自分の顔に近づき、彼の薄い唇が彼女の唇に触れた。

それはほんの軽い接触で、トンボが水面に触れるようなものだった。

しかし西村絵里は心臓が激しく鳴るのを感じた。

なぜなら……甘奈は黒田真一に抱かれていて、しかも今は目を閉じているから……

彼女が押し返しても状況は変わらない。

彼は……甘奈の前で。

西村絵里は恥ずかしくなり、男性の唇から離れようとしたが、黒田真一はますます深くキスをした。

黒田真一は表面的な接触だけでは満足せず、器用な舌先で女性の美しい唇の輪郭をなぞった。

西村絵里の唇はとても柔らかく、まるで綿菓子のようで、彼はいつもついもっと欲しくなってしまう。

西村絵里は体が硬直するほど緊張していた。甘奈の前で、まるで……不倫しているような感覚だった。

美しい瞳を開けると、男性の深い黒い瞳と目が合った。黒田真一の深遠な瞳は、まるで深い池のようで、人の心を魅了する。彼は、どんな女性をも狂わせることができる男性だった。

しばらくして……目の前の女性の顔が赤く染まっているのを見て、黒田真一はようやく名残惜しそうに女性の柔らかな唇から離れた。