「はい。」
「とても簡単よ……」
そう言って、西村絵里は口元の笑みをこらえながら、スマホを取り出し、ボーイのテーマソングを再生した。
私について左手右手でスローモーション、スローモーションリプレイ!
音楽が流れ始めると、さっきまで悔しそうに泣いていた小さな女の子は、すぐに笑顔になった。
「パパ、すごく良い曲だね。」
黒田真一:「……」
西村絵里の勝ちだ。
黒田真一は口角を引き上げた。元々胸元は甘奈のよだれでかなり濡れていたが、今は小さな女の子の涙でさらにぐしゃぐしゃになっていた。
黒田真一も感慨深く思った。自分がいつからこんな忍耐力を持つようになったのだろうか。
「パパ……わぁ……朝のパパもすっごくかっこいいね。」
黒田真一:「……」
さっきまでは悔しくて仕方なかったのに、今はすぐに元気になった。