第634章 黒田さん公然の便乗1更(6)

「うん、それでいい……」

黒田真一の口元に妖艶な笑みが浮かび、魅惑的で妖しい雰囲気を醸し出していた。

この姿は、普段ビジネスの場で見せる男とは別人のようだった……

本当に子供のようだ。

……

西村絵里は茶碗蒸しとご飯を混ぜ合わせ、目の前の男性に小さな一口ずつ食べさせた。彼女は目の前の男性を見つめながら、優しく言った。「これを食べて、それからスープを少し飲んで。」

「うん。」

黒田真一は女性が自ら食べさせてくれることを非常に楽しんでいた。満足げに口角を上げ、黒い瞳に艶やかな光を宿しながら、女性の白く柔らかな顔を見つめて言った。

「一緒に食べよう。」

「いいわ。」

一緒に食べると言いながらも、西村絵里はずっと黒田真一に食べさせ続けていた。最後には黒田真一が我慢できなくなり、西村絵里に一口、自分に一口と強制した。

なんて幼稚なんだ！

かの有名な黒田真一がこんなに幼稚な男だとは、今まで知らなかった。

西村絵里は思わず笑い、呆れた様子で言った。「黒田真一、あなたってこんなに幼稚なの……自分でわかってる？」

「うん、最初は知らなかったけど、黒田奥さんに出会ってから気づいた。」

西村絵里：「……」

つまり、すべての過ちは自分にあるということか。

西村絵里が細めた目で考え込んでいると、男の妖艶な声が耳元で響いた。

「絵里、俺に言いたいことがあるんじゃないか？」

西村絵里：「……」

黒田真一に言いたいことはたくさんある！

どうやら本当に話し合うべき時が来たようだ。

西村絵里はさらりと返事をし、頷いた。

「うん、あるわ……」

「ん？」

二人の会話は非常に簡潔だったが、すべては言葉にせずとも通じ合っていた。

「うーん……会社のことなんだけど……矢崎凌空が私の作品は彼女の作品のパクリだと言って、それから……彼女は人証と物証を提供したの。それらは……参考価値はそれほど高くないけど、信憑性はとても高いの。人証というのは、彼女が半年前に山口琴子と一緒にデザイン案を見たということ。物証は……彼女のパソコンにデザイン図があるということ。でも私は、何も持っていない。」

西村絵里は事の顛末を手短に、しかし明確に説明した。

黒田真一はそれを聞くと、顔が完全に冷え切り、一筋の冷気が走った。

「そうか、何か突破口はあるのか？」