黒田真一……まさにそのようなケシの花のような男だった。
一瞬前は……妖艶な表情で、骨の髄まで可愛がってくれる。
次の瞬間には……すぐに見せかけだけの、完全に几帳面な上司の姿になる。
これは本当に自分の立場をきちんと弁えているんだなと、西村絵里は思わず笑みを漏らした。男性のこの厳粛で真剣な様子を見て、しばらく考えた後、この夫を……呼ぶべきか呼ばないべきか?
自分は……いつも黒田真一に対して気まぐれに振る舞い、二人は密かに駆け引きをしていた。自分は一度勝ちたいと思っていたが……毎回、完敗してしまうのだ。
そう思うと、西村絵里は不機嫌そうに口を開いた。
「うーん……ダーリン!黒田真一、これで満足した?」
「甘さが足りないな」
西村絵里:「……」
甘くなんかないよ。
西村絵里は口元に微笑みを浮かべ、声を柔らかくした。
「ダーリン……」
「ほら……いい子だ、ダーリンの腕を抱きながら呼んで」
西村絵里:「……」
自分が初めて黒田真一をダーリンと呼んだのは……井上莉菜の前だった。
あの時は、突然小さな手で黒田真一の腕を抱きながら甘く呼んだのだった……
西村絵里は美しい瞳をきらめかせた……あの時、黒田真一は全身が少し硬直していたことを覚えている。しばらくしてから、やっと口元に妖艶な笑みを浮かべた。
西村絵里は口元を引き締め、黒田真一がこういうのに弱いのだと分かった。
西村絵里は小さな手を伸ばして黒田真一の腕に絡め、口元に甘い笑みを浮かべ、黒田真一の耳たぶに近づき、とても真剣に甘えた声で言った。
「ダーリン、うーん、一体解決策は何なの?ねえ?」
言い終わると、西村絵里はとても魅惑的に黒田真一の耳たぶに近づき、熱い息が黒田真一の感覚と呼吸をかすかに撫でるように、黒田真一は……すぐに喉が引き締まるのを感じた。
西村絵里は、間違いなく悪魔ちゃんだ……
自分を止められなくさせる……ただ悪魔ちゃんのこのような誘惑、そそのかしに任せるしかない……
黒田真一の黒い瞳は再び濃墨のような深みを帯びた。
西村絵里は甘えた様子で、魅惑的で……
「黒田真一、これで満足した?」
「足りない……」
西村絵里:「……」
足りないってどういう意味?
自分はもう呼んだのに……