夜は水のように冷たかった。
藤原景裕はひとり食卓に座り、使用人たちはすでに片付けを終えて去っていた。
広々としたリビングには藤原景裕だけがおり、男の背筋の伸びた後ろ姿は非常に寂しげに見えた。
藤原景裕はゆっくりと手を伸ばし、村上念美が半分残したトマトと卵の麺を自分の前に持ってきた。
長い指がどんぶりの縁に触れる。麺はすでに冷め、長時間茹でられたため柔らかくなりすぎていた。食べ物として、この麺の見た目は良くなかった。
藤原景裕は潔癖症で有名で、例えば食事の盛り付けにさえ極めて厳しい要求をすることがあった。
盛り付けが精巧でなかったり、食材が新鮮でなかったり、料理の見た目が魅力的でなければ、藤原景裕は二度と見向きもしなかっただろう。
しかし、唯一村上念美の食べ残しだけは嫌がらなかった。
例えばポテトチップス。藤原景裕はずっとそれをジャンクフードだと思い、鼻で笑っていたが、村上念美はそれが大好きで、時には食事代わりにしたり、半分食べた後で意地悪く彼の口に押し込んだりした。
とにかく、藤原景裕は苦笑いするしかなく、自分がどれだけクールを装っても、彼女には効き目がなかった。
村上念美は後に彼に食べさせることに慣れ、よく食べ物を半分食べて彼に渡し、自分は新しいものを試すようになった。
そのため、藤原景裕は食べ物に対して恐ろしいほど厳しい要求をしていたにもかかわらず、村上念美が食べ残して自分に渡す食べ物には何の要求もなく、すべて受け入れていた。
藤原景裕の深い視線は目の前のトマトと卵の麺に落ちた。
彼女が手作りした麺を、どうして捨てられようか。
半分食べられ、冷え、柔らかくなりすぎた最も質素なトマトと卵の麺でさえ、藤原景裕は今や美味しいと感じていた。
なぜなら、それは彼女が手作りしたものだから。
夜が深まる中、藤原景裕は箸を取り、どんぶりの麺をつまみ、優雅に味わった。まるで珍味を食べているかのように満足げだった。
冷めていて、長時間浸かっていたが、味は適度で、悪くなかった……
3年前なら、藤原景裕は村上念美がこんなに美味しい麺を作れるとは想像もできなかっただろう。
藤原景裕は村上念美が台所に立ったことに喜びを感じるどころか、比較すると、心配と怒りを感じていた。