村上念美は自分と藤原景裕が行き詰まりに陥ったように感じていた。
二人は今、同じベッドで寝ている夫婦なのに、体は近くにあるのに、心は遠く離れているようだった。
……
村上念美は夜中まで悶々として、やっと寝付くことができた。翌朝目を覚ますと、藤原景裕はもう隣にいなかった。
村上念美は少し呆然として、小さな手を隣のベッドに伸ばした。そこにはまだ男性が残したミントの香りがかすかに残っていて、とても良い香りだった。枕はきれいに整えられており、藤原景裕の潔癖な性格にぴったり合っていた。
朝にはまだエッセンシャルオイルの原料供給業者と連絡を取らなければならないことを思い出し、村上念美は急いで起き上がり、バスルームで身支度を整えてから階下に降りた。
村上念美がリビングに着くと、意外にも見慣れた姿を見つけた。
「来春さん……」
来春さんは藤原家の古くからの使用人で、十代の頃から藤原家で働いていると聞いていた。藤原家の世代を超えて面倒を見てきており、藤原景裕も幼い頃から来春さんに育てられたのだった。
村上念美は子供の頃からよく藤原家に遊びに行っていたので、来春さんとも非常に親しく、藤原家の皆が来春さんに対して非常に丁寧に接していることを知っていた。
「村上三女さん、本当にあなたでしたか」
来春さんは村上念美の姿を見て非常に興奮した様子だった。六十歳を過ぎていたが、まだ元気で、手際よく既に豪華な朝食を用意していた。
「若様が私に来るよう連絡してくださって、誰のためかと思っていました……よく考えたら、あなた以外に誰がいるでしょうか」
他の人は藤原景裕にとっては常に空気のような存在だったが、村上念美は藤原景裕の命の源だった。
村上念美は来春さんの言葉を聞いて、心が少し動いた。
来春さんは長い間村上念美に会っていなかったので、彼女を引き寄せて海外での3年間の状況について詳しく尋ねた。村上念美は良いことだけを話し、深く立ち入ることはなかった。藤原家のことについては、考えた末に質問しないことにした。
「若様が言っていました。これからはあなたの健康が私の仕事だと」
村上念美は唇を噛んだ。おそらく自分のお腹の子供を心配してのことだろう。実際、昨日自分が作ったトマトと卵の麺は本当に悪くなかったのに……