022 藤原さんが来た

休憩室内:

「行きましょう」

景山瑞樹は視線で村上念美に自分の腕を組むよう促した。村上念美は口元に微かな笑みを浮かべ、手を上げて男性の腕に手を添えた。

……

パーティー会場に入ると、村上念美はようやく今日のパーティーがとても盛大なものだと気づいた。大崎市の権力者たちが全員出席していた。

ここ数日、村上氏の雑事に忙殺されていた村上念美は、このようなパーティーのことを気にかける余裕がなかった。

村上念美は唇を引き締めた。実は3年前、自分が婚約破棄という衝撃的な行動をとって以来、人前に姿を現したくないと思っていた。

「帰りたい?」

隣にいる景山瑞樹が彼女の心を正確に言い当てた。村上念美は否定しなかった。

「うん」

「村上念美、あなたは今、村上氏を引き継いだばかり。ビジネスの世界では人間関係が非常に重要だよ」

村上念美:「……」

村上念美は景山瑞樹の珍しく真面目な言葉を聞きながら、顔を向けて男性の妖艶で深い黒い瞳と目が合い、軽く唇を噛んだ。

「景山様、あなたの言葉は、私に善意で支援してくれているのかと誤解させますね」

村上念美は冗談めかして言ったが、美しい瞳は水のように澄んでおり、いくらかの真剣さを滲ませていた。真実と嘘が入り混じっていた。

「精油事業を手放したのは、もう明らかなことだと思っていたよ」

嘘つき。

村上念美は心の中でつぶやいた。今、自分と藤原景裕の内密の結婚は誰も知らない。外部の人から見れば、村上氏は混乱状態で、自分自身も弱い立場にある。

だから景山瑞樹が自分を攻撃するのは簡単なはずだ。

それなのに男は手加減している……

景山瑞樹は長い目で見て大きな獲物を狙っているのか?

村上念美は少し頭が痛くなった。景山瑞樹と駆け引きするのは本当に簡単なことではない……

……

「藤原さんがいらっしゃいました」

誰かが声を上げると、皆の視線が一斉に会場外の黒い高級スポーツカーに向けられた。村上念美はそれが藤原景裕の車だとわかった。

以前、藤原景裕と結婚届を出しに行った時も、この車に乗っていた。

来場者は皆女性の同伴者がいて、藤原景裕も例外ではなかった。

藤原景裕は長身を運転席から降ろし、表情は氷のように冷たく、近寄るなという態度だった。

赤いドレスを着た女性の同伴者が男性の後部座席から降り、彼の後に続いた。