冷たい言葉、温もりなど微塵もなく、その後男は彼女を置き去りにして去っていった。
バタンという音と共に、部屋のドアが閉まった。
寝室には再び村上念美一人だけが残された……
村上念美は美しい瞳を微かに震わせ、藤原景裕が去ってからずっと立ち直れないでいた。
それは男の激しい行為による痛みのせいなのか、それとも彼の悪言による屈辱感のせいなのか分からなかった。
村上念美は口元に苦い笑みを浮かべ、まったく気分が乗らない……
藤原景裕の毒舌は前から知っていたが、まさか自分に向けられる日が来るとは思ってもみなかった。
村上念美は震える手で服を整え、肩の乱れを拭き取り、再びベッドに戻ったが、眠気はまったくなかった。
静かな夜、思考は混乱していた。
……
村上念美が翌日目を覚ました時、隣のベッドは使われた形跡がなく、藤原景裕が出て行った後、戻ってきていないことが分かった。
村上念美は身支度を整えた後、クローゼットからスーツを取り出して着替え、寝室を出た。
階下に降りると、来春さんはすでに別荘に来ており、豪華な朝食を用意していた。
「来春さん、おはようございます」
「念美ちゃん、おはよう」
来春さんは村上念美の顔色が少し青白いのを見て、急いで言った。「ナツメのお粥を作ったから、後でたくさん飲んで、血と気を補ってね」
「はい、はい」
村上念美は返事をし、周りを見回したが藤原景裕の姿が見えず、唇を噛んで尋ねた。「彼はどこ?」
「若旦那なら、朝早く出かけましたよ」
来春さんは藤原景裕の顔色が悪かったことや、書斎を掃除した時に多くの吸い殻を見つけたこと、部屋中がタバコ臭かったことは言わなかった。
村上念美はうなずいただけで、藤原景裕がどこに行ったのかは追及せず、おとなしくダイニングチェアに座って朝食を食べ始めた。
しばらくすると、藤原景裕がジャージ姿で、一匹のハスキー犬を連れて入ってきた。
村上念美:「……」
ボス?
村上念美は藤原景裕が連れているハスキー犬をすぐに認識した。それは高校時代に学校の門の前で拾った犬だった。
その時、ボスはまだ生まれたばかりで、とても弱々しく、目も開いていなかった。村上念美はおそらくどこかの子供が犬小屋からこっそり連れ出したのだろうと推測した。