042 私は普通の男だ

村上念美は藤原景裕の心の奥底にある棘が木村陽太だと知っていた。

普段なら、村上念美は絶対に藤原景裕の前でこの電話に出ることはなかっただろう。

しかし今は...出ないわけにはいかなかった。

電話に出ることは良い言い訳になる。

さもなければベッドの上で藤原景裕を拒否すれば、結果はもっと深刻になるだろう。

結局、藤原景裕はすでに木村陽太からの着信を見ていたのだから、もし自分が出なければ、心に後ろめたいことがあると思われてしまう。

……

村上念美は深呼吸して、手を伸ばして電話に出たが、遠くへは行かず、ソファに座った。

結局、自分と藤原景裕は夫婦なのだから。

自分と木村陽太には隠すような関係はないのだから……

「木村陽太兄さん……」

藤原景裕も木村陽太も村上念美より年上なので、念美は習慣的に景裕兄さん、木村陽太兄さんと呼んでいた。