村上氏:
村上念美がオフィスに戻ってきた後も、まだ何だか不思議な気持ちだった。
一体何の話だったのだろう。
景山大旦那様の威厳は大崎市では誰もが知るところで、藤原大旦那様と並んで大崎市の泰山北斗と称されている。
ずっと厳格で真面目な人だと思っていたのに、実際に会ってみると、本当に面白い人だった...だからこそ景山瑞樹のようなチャラい孫を育てることができたのだろう。
「村上お嬢様、景山様がいらっしゃいました。お会いになりたいそうです」
レイアが敬意を表して部屋をノックして入ってきた。念美はそれを聞くとすぐに言った。「私はいないと伝えて...」
景山瑞樹が直接乱入してこなかったことに、念美はとても驚いた。
レイアが去った後、すぐにイチゴケーキを持って戻ってきた。
「村上お嬢様、これは景山様が残していったイチゴケーキです。あなたに食べてほしいとのことでした...」
村上念美:「...」
このイチゴケーキは自分が景山大旦那様のために買ったものではなかったか?
念美は手元の書類を置いて考え込んだ。実際、景山瑞樹は自分が村上氏にいることを知っていたのだろう。
しつこく迫ってこない景山瑞樹...初めて見る光景だった。
「これを持って行って、みんなで分けて食べて。私はイチゴ味には興味がなくて、ブルーベリーの方が好きなの」
「かしこまりました、村上お嬢様」
...
景山瑞樹は帰らず、レイアが出てくるのを待っていた。レイアの手にまだイチゴケーキがぶら下がっているのを見て、眉をひそめた。
「彼女は食べなかったのか?」
「村上お嬢様はブルーベリー味の方が好きだとおっしゃっていました」
景山瑞樹はそれを聞いて目を細め、目を輝かせると、携帯を取り出して助手に電話をかけた。
「オランダから最高に新鮮なブルーベリーを空輸して村上氏に届けるように手配しろ。それから、一番美味しいブルーベリーケーキを買って持ってこい...」
「なに?どこが一番美味しいか分からないって?なら全店舗から一つずつ買って持ってこい」
「ブルーベリー味に関連するお菓子は全部買って村上氏に届けろ」
レイア:「...」
秘書部の他の秘書たちもレイアを含めて、景山瑞樹の指示を聞いて目を丸くし、思わず唾を飲み込んだ。
噂の景山様は、確かに常識外れだった。