087 彼に行ってほしくない、彼に付き添ってほしい【初回購入お願いします】_5

「景山大旦那様、どうしてこんな早朝からいらっしゃったんですか？」

「うむ...君に会いに来たんだよ...朝ごはんを持ってきたんだ。今どきの若い者はね、よく朝食を抜いて出勤するそうだが、それを長く続けると、胃にはよくないんだよ。」

そう言って、景山大旦那様はわざわざ手に持っていた朝食を取り出して見せびらかした。

村上念美はその言葉を聞いて心が温かくなった。確かに...南町別荘に住んでいなければ、毎日来春さんが朝食を用意してくれなければ、自分の性格では、きっと不規則な食生活を送っていただろう。

今の気温はそれほど高くなく、ほぼ零度に近づいていた。80歳を超えるお年寄りに玄関で自分を待たせるなんて、村上念美は心苦しく感じていた。

「ありがとうございます。」

村上念美は大旦那様から温かい朝食を受け取り、そして静かに言った。「今日のは頂きますが、明日からは絶対に持ってこないでください。私は毎日朝食をしっかり食べてから出勤しますから。」

村上念美が口元を緩めると、景山大旦那様はようやく村上念美が車で通勤していることに気づき、彼女の身に着けている服も安いものではないことがわかった。

どうやら...普通のサラリーマン階級ではないようだ。

さらに女性の話し方も並外れて...どこか高貴で優雅さを漂わせていた。

景山大旦那様は一瞬、自分が昨日初めて村上念美に会ったわけではないような気がした。以前、この娘に会ったことがあるはずだ。

彼女から感じる雰囲気がとても馴染み深い。

「大旦那様、私は仕事に行かなければなりません。あの、下階のカフェで私を待っていますか？それとも一緒に上がって、私のオフィスで少し座っていきますか？」

「私は...」

「村上お嬢様、おはようございます。」

「ええ、おはよう。」

景山大旦那様が口を開こうとした時、横から行き交う社員たちが丁重に村上念美に挨拶をしているのが聞こえた。村上念美はそれぞれに軽く微笑み返した。

景山大旦那様はしばらく状況を把握できなかった。普通の社員だと思っていたのに、自分のオフィスがあるなんて...しかも村上姓...

まさか？

「お嬢さん、あなた...まさか役職についているのかい？」

大旦那様は以前長年軍隊にいたため、多くの話し方の癖が直っておらず、まだとても率直だった。村上念美はそれを聞いて軽く笑った。