第3章

唐田悦子の足が震え始めた。死神の目に見つめられているような気がして、顔色が一瞬で真っ青になった。

「ちょっと、何してるの？早く悦子を離して！明らかにあなたが彼女にブレスレットをあげたのに、今になって返せって言うの？そんなケチな人いる？本当にケチね」

長谷真理が唐田悦子を助けようと駆け寄ったが、青木朝音のふわりと投げかけられた視線に凍りついてしまい、息をのんだ。

なんて不気味なんだ、このバカがどうしてあんな目をしているの？

青木朝音は鼻で笑った。「はぁ？ケチ？3億以上するブレスレットを、そう簡単に人に譲ると思う？」

言い終わるや否や、青木朝音は突然唐田悦子の襟元を離し、素早く彼女の顎をつかみ、力を入れて持ち上げた。

広々とした豪華なリビングは、一瞬にして重苦しい空気に包まれ、身の毛もよだつような雰囲気になった。

「さ、さん、3億？そんなに高いの？」

長谷真理は信じられないという顔で目を見開き、恐怖で固まっていた様子だった。

唐田悦子も同様だった。まさかブレスレット一つがそんなに高価だなんて、夢にも思わなかった。せいぜい数百万円だと思っていた。

そうでなければ、青木朝音のようなバカが、彼女が軽く言及しただけで、ブレスレットを貸してくれるはずがない。

だから彼女は一瞬も躊躇わず、ずっと自分を冷遇してきた実家のお婆さんに、その腕輪を贈った。お婆さんの機嫌を取るためだけに。

お婆さんは確かに彼女の孝行心を褒め、そのブレスレットを手放したくないほど気に入っていた。

今考えると、そんなに高価なブレスレットなら、手放したくないのも当然だ。

唐田悦子はすぐに慌てて、言葉を詰まらせながら答えた。「わ、わ、わたし...…お婆ちゃんにあげちゃった」

「そう、」

青木朝音は怒るどころか、薄笑いを浮かべながらもう一度彼女をじっと睨みつけると、さっとその場から放り出した。

力が強かったため、唐田悦子はよろめいて尻もちをついた。

まるで悪魔のようにゆっくりとした声が続いた——

「私がケチだというなら、徹底的にケチになってやる...…」

青木朝音は脇にいたメイドたちに目配せした。「はい、あんたたちの出番よ。この人たちの服もアクセも靴もバッグも、ぜーんぶ取っちゃって。代わりに適当なボロでも着せてあげて。見苦しいと通報されかねないからね？」

メイドたちは顔を見合わせ、命令に従うべきか迷った。結局、青木朝音はこの家では何の権威も持っておらず、彼女たちはいつも四人の男性の命令だけに従っていたからだ。

しかし！

今日の青木朝音はまるで別人のようだった。彼女たちはほんの少し躊躇しただけで、不思議と言われた通りに行動した。

「青木朝音、正気なの？私たちは友達でしょ？！もう友達でいたくないの？言っておくけど、私、怒ってるわよ！」

唐田悦子は青木朝音が本気だと気づき、すぐに恥ずかしさと怒りで顔を歪め、精巧なメイクをした顔が醜く変わった。こう脅せば青木朝音はきっと怖がると思った。

しかし予想外にも——

「あの大きな犬を連れてきて、彼女たちが大人しく従わないなら、ドアを閉めて犬を放して」

間もなく、ずんぐりとしたコーカサス犬が引き込まれてきた。獰猛な風貌で狂ったように吠え立て、鎖を振りほどかんともがく巨体。

唐田悦子と長谷真理はその場で泣き出し、最終的には不本意ながら自分たちで服を脱いだ。心の中では青木朝音への憎しみが川の流れのように絶え間なく湧き上がった。

彼女たちは密かに誓った、今日受けた屈辱は、いつか倍にして返してやると！

青木朝音、覚えておきなさい！

青木朝音は高みから下着姿になった二人を見下ろし、ついでに彼女たちの体型を鑑賞した。

突然、彼女はのんびりと口を開いた。

「不満に思わないで、これらのものはもともと私が施してあげただけ。今取り戻しても、あんたたちには何の損失もないわ」

ここまで言って、青木朝音は足を踏み出して唐田悦子に近づき、ゆっくりと彼女の横にしゃがみ込んだ。

青白い指で、唐田悦子の青ざめた頬を軽くたたき、一言一句はっきりと言い渡した——

「最大で三日間の猶予をあげる。ブレスレットを無傷で返しなさい。さもなければ、あんたとその一族のすべてを失わせるわ！信じないなら、試してみればいい」

言い終わると、青木朝音はゆっくりと立ち上がり、彼女たちを見ることなく、そのまま階段を上がって行った。

知らないうちに、彼女のさっきの行動が、多くの若いメイドたちを魅了していた。

「まあ、私の目がおかしくなったのかしら、青木のバカ女...…あっ違った、朝音さんが、さっきすごくかっこよかった！」

「うんうん、マジでイケててカッコイイ！ちょっとブサイクなのが残念だけどぉ～もうちょっと可愛かったら……私、振られても告白しちゃうかも」

「ブサイクって何よ！それは彼女のすっぴんを見たことがないからよ。あの神々しいまでの美しさに、あなたのケータイカメラなんか一瞬で故障するわ」

同時に、玄関では。

背の高い堂々とした姿が立ち、階段の方向を見つめ、完全に呆然としていた。

しばらくして、向井涼太（むかい　りょうた）は携帯を取り出してラインのグループに入り、音声メッセージを送り始めた——

「くそっ、くそっ、くそっ！アオピエが悪霊に取り憑かれた！それもかっこよくて傲慢な悪霊だ！さっきの姿はめちゃくちゃかっこよかった！」