第25章 ピアノの大家を打ち負かし、男主人公の登場(9)

この瞬間、古川松陰は自分が太古の力を使い果たしたように感じた。本当に疲れたが、同時に異常なほど爽快だった。

彼自身でさえ不思議に思うほどで、まるで実際に体験したかのように、あの境地を演奏することができた。

そして今は平和な時代で、ゾンビなど全く存在しない。単なる想像だけで、こんなに驚くべき演奏ができるとは?

彼は自分が天才だと思った。

思わず魔法をかけられたかのような両手を上げ、じっと見つめた。何か奇妙な感じがするが、それが何なのか言葉にできなかった。

彼だけでなく、青木朝音さえも驚き、とても信じられない様子だった。

彼女は最初、この人は実際に経験していないのだから、せいぜい三割程度の境地しか表現できないだろうと思っていた。

しかし、まさか彼が終末の危機の緊張感をあれほど完璧に表現できるとは……