第31章 青木朝音の身内を庇う癖が出た(1)

麗水ベイタウン。

「どうやらアオピエは本当に引っ越したみたいだね?もう丸一日も現れないなんて、なんだか変な感じがするよ。」

向井涼太は厳谷究の洗脳の下で、自分の肉体を捧げて青木朝音を追いかける決心をしていたのに、彼女が逃げてしまったことで、喜ぶべきか落胆すべきか分からなくなっていた。

「彼女が契約は無効だと言ったんだから、今日からは自由の身だ。」

厳谷究は嬉しくて裸で走り回って祝いたいくらいで、特別にメイドに今日は大掃除をするよう指示し、ようやく別荘の内外にある青木朝音の痕跡をすべて取り除くことができた。

「ああ、俺たちって酷すぎたんじゃないか?一応名目上は俺たちの婚約者だったのに、毎日見下して、冷たい態度を取って、あんな風に罵ったりして。俺だったら怒って引っ越すよ。」

向井涼太は自分がどうしたのか分からなかった。理屈の上では、青木朝音が引っ越したことを喜ぶはずなのに...喜びを感じるどころか、何となく寂しさを感じていた。

思わず自問自答し始めた。以前の自分たちは酷すぎたのではないか?

一応女の子なんだし、見た目は少し醜くて、少し間抜けで、少し男好きだけど、少なくとも心は...優しいはずだ?

「優しい」という言葉について考えると、向井涼太はあまり自信がなかった。結局、彼女は以前青木愛茉を陥れたことがあり、かなり計算高い女だった。

よく考えてみると、アオピエには本当に取り柄がないのだろうか?

「おいおい涼太、まさか本当に彼女に惚れたんじゃないだろうな?若いのに目が見えなくなったのか、ツツツ...」

厳谷究は軽蔑と嫌悪の表情を浮かべていたが、彼自身もすぐに目が見えなくなることを知る由もなかった。

「それは君が彼女が人を虐める時の凄みを見ていないからだよ。本当にカッコいいんだ!まるで別人みたいになるんだ。信じないなら、彼女たちに聞いてみれば...あれ、どうしてみんな死にそうな顔してるの?」

向井涼太は自分の言葉を証明するために、側にいた小さなメイドを指さしたが、メイドたちは皆元気がなく、一人は目が赤く、昨夜一晩中泣いていたようだった。

「まさか全員失恋したのか?」

向井涼太は突然保護欲が爆発し、立ち上がって尋ねようとした時、厳谷君彦が戻ってきた。

「荷物をまとめないのか?」