第83章 木村琢真の苦心説得

「行こう、君たちは私とF組に来てくれ」木村琢真は二人に言った。口調はまだ穏やかで、それから前に立って道を案内した。

後藤雪夜は少し緊張して青木朝音の腕を組んでいたが、心の中ではとても嬉しかった。朝音と同じクラスになれるからだ。

「朝音さん、一緒に座ってもいい?」彼女は弱々しく尋ねた。

「いいよ」青木朝音が答えると、後藤雪夜は嬉しそうに笑い、ぽっちゃりした顔立ちが一つに集まった。

「なんだか少し痩せた気がするけど?この数日ちゃんと食べてなかったの?」青木朝音は眉をひそめて尋ねた。

後藤雪夜は「痩せた」という言葉を聞いてさらに喜び、目を輝かせた。「本当?私、本当に痩せた?」

彼女は最近確かにダイエットをしていた。少し痩せて綺麗になりたかったのだ。太りすぎて朝音に嫌われたくなかった。

「実は今のままでも十分いいよ、そんなに太ってるわけでもないし」青木朝音は言った。「もし痩せたいなら、手伝ってあげられるけど」

「え?どうやって?」後藤雪夜は好奇心を持って尋ねた。

「星さんの『詩人の大冒険』って映画見たことある?あの中に『美を返せ拳』っていう拳法があるんだけど、実際に存在するんだよ。しかも私も使えるの。もし痩せて綺麗になりたいなら、毎日私に数発殴られるだけでいいよ。一ヶ月もしないうちに、稲妻のように痩せられるよ」

彼女は冗談を言っているわけではなく、本当に使えるのだ。ただ、この世界には所謂の気力神気というものがなく、拳法を使っても効果はそれほど良くないだろうが、それでもある程度の効果はあるはずだ。

しかし後藤雪夜は彼女が冗談を言っていると思い、プッと笑った。「朝音さん、からかわないでよ。そんな拳法が本当にあるわけないじゃない?」

「本当にあるよ」青木朝音は真剣に頷いた。

前を歩いていた木村琢真先生も聞いていて、思わず笑いそうになった。こんな真面目な顔で嘘をつくのは、彼女くらいだろう。

ここから教室棟までまだ少し距離があるので、この機会に彼女たちとよく話して、お互いに親しくなろうと思った。

そこで、木村琢真はわざと足を遅くして、咳払いをして後ろを振り返った。「君たち二人はこれからしっかり勉強しないといけないよ。余計なことを考えたり、ラブレターとか...咳、もう書かないでくれ」