第229章 オークションで真田千晴の忘憂の身分を暴く(5)

皆が後ろを見ているのを見て、北川蒼涼と北川和蒼、そして北川倫慶も思わず後ろを振り返った。すると、あの若者のだらしない姿勢がどこか見覚えがあるように感じた。

その目さえも何か親しみを感じさせるものがあったが、男性だったので、彼らはそれ以上考えず、すぐに視線を戻した。

真田雨美は突然立ち上がり、口髭の若者を指さして言った。「彼は私の姉を偽装した偽物の忘憂です。最近では露店で忘憂の匂い袋を売っていました。こんな人は明らかに便乗して入ってきたのです。主催者の方、彼を追い出してください!」

「誰が彼女は便乗して入ってきたと言ったの?彼女は私が招待した貴賓だよ」

妖艶で怠惰な声が突然響き渡った。華麗な声質で、聞いているだけで耳が妊娠しそうなほど美しかった。

会場に入ってきたのは細長い影だった。男性は白い高級オーダーメイドのスーツを着ており、彼の体型をより完璧に引き立てていた。細長く美しい目は上向きに少し吊り上がっており、不敵で風流な雰囲気を漂わせていた。

彼を認識した人がいて、驚いて叫んだ。「もし私の推測が間違っていなければ、彼は井上家の次男、井上隼風ではないでしょうか?さすがに才色兼備ですね!」

「かっこいい!彼が井上家の次男坊だったの?」真田雨美はまた夢中になって花を咲かせ始めた。

真田千晴の表情も一瞬固まった。ずっと姿を見せず神秘的にしていた井上家の次男がこんなに若くてハンサムだとは思いもよらなかった。

よく見ると、彼の眉目は古川松陰と少し似ているような気がした。錯覚かもしれないが。

二人とも一流のイケメンだった。

ただ、井上隼風の容姿はやや柔和な感じで、古川松陰の容姿はより男らしく威厳があった。

できることなら、この二人の男性を両方とも後宮に迎え入れたいと思った。

しかし今、井上隼風はあの口髭の若者が彼の招待した貴賓だと言ったのだ?

真田千晴は心の中で何か不吉な予感を感じ、無意識に指を握りしめた。

北川蒼涼と北川和蒼も井上隼風を数回見つめ、彼という人物に興味を持った。

井上家、これ以上ないほど神秘的な家族で、誰も井上家が何をしているのか知らなかった。ただ勢力が巨大で、誰も敢えて彼らを怒らせようとしないことだけは知られていた。