教室で、後藤雪夜は頭を下げて一生懸命勉強し、真剣に問題を解いていた。誰かが自分を呼ぶのを聞いて、やっと少し遅れて顔を上げて見ると、窓越しに彼女はあまり馴染みのないシルエットをぼんやりと見た……
向井涼太、彼女の継父の息子、つまり血のつながりのない兄だ。
彼はなぜ来たのだろう?
彼女に会いに来たのだろうか?
後藤雪夜は心の中で少し疑問に思ったが、それでも素直に立ち上がって外に出た。
向井涼太の前に来ると、後藤雪夜は体中が落ち着かず、唇を軽く噛み、両手をどこに置いたらいいのか分からなかった。まだ口を開く暇もないうちに、ある有名ブランドの服の入った袋が彼女の腕に無理やり押し込まれた。
「服を届けに来た。中に二着入ってる。一着着て、もう一着は捨ててもいい」
少し適当にそう言い終えると、向井涼太は厳谷究と一緒に踵を返して立ち去った。