青木朝音は怠惰な口調で言った。「やり終えたよ。」
北川麟兎は一瞬固まった。寝ていてもやり終えられるの?ダメだ、きっとでたらめに書いたんだろう。
すぐに彼女に対して歯がゆさを感じ、もう一度叱りつけようとしたところ、青木朝音が言った。「行こう、ご飯食べに。お腹すいた。」
青木朝音はパーカーの紐をきつく引き締め、両手をポケットに突っ込み、誰にも媚びない足取りで階下へ向かった。
北川麟兎はぴょこぴょこと彼女の後を追い、絶え間なくおしゃべりを続けた。
「今日の数学のテスト、ちょっと難しかったよね。特に最後の選択問題、すごく長い時間かかったけど、なんとか正解を出せたよ、ははは。」
青木朝音は彼を横目で見て、興味深そうに尋ねた。「じゃあ、AとBのどっちを選んだの?」
北川麟兎は自信満々に答えた。「もちろんBだよ、絶対Bだよ。」
青木朝音は少し同情的な目で彼を見て、さらりと言った。「正解はAだよ。」
北川麟兎は信じられない顔をした。「まさか?明らかにBだよ。他の人にも聞いたけど、みんなBを選んでたよ。」
青木朝音は無関心そうに一言。「魔王あさねの参考書、35ページの最後の問題、もう一度見てみなよ。」
そう言うと彼女は大股で教室棟を出て、校門の出口へ向かった。
「え?」
北川麟兎は少し呆然として、気にせずに頭をかいた。
二人の後ろを歩いていた厳谷君彦は、ちょうど青木朝音のその言葉を聞いて、再び眉をひそめ、目の奥に複雑な光が走った。
……
今日は寒かったので、青木朝音は火鍋が食べたくなり、火鍋店にやってきた。
北川和蒼は北川麟兎にテストの様子を聞きに来たふりをして、一緒に食事することになった。
後藤雪夜もこの時、青木朝音に呼ばれて来ており、おとなしく青木朝音の隣に座り、彼女を崇拝するような目で見つめながら、突然小声で口を開いた。
「朝音さん、あなたはすごいわ。あなたが作ってくれたノートがとても役に立ったの。今日のテストの問題のほとんどが解けたわ。」
唇を噛んで少し間を置いてから、続けた。「特に最後の選択問題、みんながBを選んだって言ってたけど、私はAを選んだの。正解はAのはずよ。」
それを聞いて、青木朝音の目が輝き、彼女の頭を撫でながら賞賛の口調で言った。「そう、Aよ。」