その弾丸は青木朝音の足元に命中し、現場は一瞬にして大混乱に陥った。北川倫慶と厳谷究は考える間もなく、すぐに青木朝音の前に飛び出して彼女をしっかりと守り、そして多くのボディガードと共に彼女を車に護送した。
しかし青木朝音は終始落ち着き払っていた。ライターを取り出して手で弄びながら、目を走らせて道端の赤いバイクに視線を向け、眉を上げると、気ままに一言だけ放った。「私のことは気にしないで」
そして彼女はドアを開けて車から降り、大股でそのバイクに向かって歩き、颯爽と跨った。安全ヘルメットを装着すると、周囲の人々の驚愕の視線の中、バイクは猛烈な轟音と共に走り去った!
「うわっ、Jキングは命知らずか?殺し屋がいるのを知っていながら、一人で出て行くなんて」
「まずいぞ、危険じゃないのか?」
北川倫慶は顔色を変え、急いで井上隼風のところへ行って相談し、傭兵ボディガードたちに彼女の安全を守るために追いかけるよう頼んだ。
しかし井上隼風もまた落ち着き払った様子で、まるですべてが掌握されているかのように、笑いながら言った。「慌てることはない。彼女が遊びたいなら遊ばせておけばいい。何も問題ない」
「どうして問題ないんだ?冷川炎と冥ノ者、あの二人の殺し屋は手強いぞ。もし私の母が...もしJキングに何かあったら、青木会全体が責任を取れないだろう!」
北川倫慶は激しく言い返し、うっかり自分と青木会を区別してしまった。
結局、彼はずっと九領局の人間であり、今回青木会に加わったのは、単に頭に血が上ってJキングに会いたかっただけだった。
井上隼風は眉を冷たく寄せ、冷笑した。「聞いたところによると、お前たち九領局はもうJキングの生死に関心がないんだろう?今さらそんなことを言うのは、自分で自分の顔を打つようなものじゃないか?」
北川倫慶は言葉に詰まり、心の中で古川松陰を一通り罵った。そして考えてみれば、もし松陰様がJキングが彼の好きな人だと知ったら、どう思うだろうか?
ふん、きっと腸が青くなるほど後悔するだろうな。
そう考えただけで、北川倫慶は思わず他人の不幸を喜び始めた。
しかし今は母上様の安全が最優先だ。彼は急いで兄に連絡し、母上様がJキングであることを伝え、母上様を守るために人を派遣してもらおうとした。