第366章 北川信望のコンサートで毒を盛られ、声が潰れた(1)

北川信望のコンサートの日は、まさに人で溢れかえっていた。会場の様子からは、北川信望という国際的スーパースターの人気の高さがうかがえ、その光景は特に壮観で、人々を極限まで震撼させるものだった。

各地のファンたちは宣伝バナーを掲げ、キラキラと光るペンライトやサイリウムを持ち、まだ開演前だというのに、あちこちから歓声が上がり、会場は熱気に包まれていた。

青木朝音と後藤雪夜、そして他の四人の兄弟たちも来ており、VIP席に座っていた。雪夜は北川信望のファンで、どこからか大量のサイリウムとペンライトを手に入れ、興奮しすぎて普段の様子とは全く違っていた。

青木朝音と北川麟兎は何気なくサイリウムを数本手に取り、振りながら遊んでいた。みんなの顔には興奮と喜びの笑顔が溢れ、今はただコンサートの開始を待つばかりだった。

「まずは祈らせてください。三兄のコンサートが大成功しますように、仏様どうかお守りください!」

北川麟兎は突然、両手を合わせ、神妙な様子で祈り始めた。

「絶対に成功するわよ」青木朝音は確信を持って言った。

「当然だ、三番目はあんなに凄いんだから、何も問題は起きないさ」北川倫慶も誇らしげに言った。

北川和蒼は青木朝音をじっと見つめ、もうすぐ母上様が作曲した曲のライブバージョンが聴けると思うと、胸が高鳴った。

そのとき、コンサート開始のカウントダウンが始まり、あと2分で開演という時間になった。それまで騒がしかった会場が一瞬にして静まり返り、全員が興奮しながらあの馴染みのあるシルエットの登場を待ち望んでいた。

やがて、舞台上で華やかな照明が輝き、魅惑的なコールドスパークが夜空を切り裂き、観客の目の前で花開いた。

人々が歓声を上げる間もなく、一筋のスポットライトが舞台中央に直射し、小さな円形の台が徐々に上昇し始めると同時に、誰もが馴染みのある美しいメロディーが流れ始めた……

万人の注目の中、あの長身でりりしいシルエットがゆっくりと視界に現れ、それに伴って耳をつんざくような歓声と呼びかけが響き渡った。

歌い始める前に、北川信望は意識的か無意識的か、青木朝音たちがいる方向に一瞥をくれた。彼女たちが来ているのを確認したのか、彼の瞳の光が柔らかくなったように見えた。そしてマイクを手に取り、優しく清らかで豊かな声が、ゆっくりと流れ出した……