第4章 神様を懐に引き入れる（4）

森川記憶は着信表示を見ると、ルームメイトでありドミトリー長の山田薄荷（やまだみんと）からの電話だった。電話に出ると、森川記憶が口を開く前に、山田薄荷の声が聞こえてきた。「記憶ちゃん、今夜の食事会は玉華台で、7時からよ。忘れないでね。」

食事会は前から約束していたもので、森川記憶も知っていた。ただ場所が、なぜ突然一人あたり五千円ぐらいの火鍋店から、一人あたり何十万円に近くする玉華台に変わったのだろう？

森川記憶は眉間にしわを寄せて、「どうして場所が変わったの？」と尋ねた。

「雅子さんが変えたのよ……」女性は生まれながらにゴシップ好きな部分がある。山田薄荷は森川記憶の質問に答えた後、さらに付け加えた。「……彼女の新しい彼氏が手配したみたいよ。そう考えると、雅子さんの新しい彼氏はかなりお金持ちみたいね。」

雅子さんとは、林田雅子（はやしだまさこ）だ。森川記憶のルームメイトで、映画大学で有名な十大美女の一人だった。まだ一度も役を演じたことがないのに、すでにネット上で少し名が知られていた。お金持ちの彼氏ができたとしても、特に驚くことではなかった。

森川記憶は平然と返した。「なるほど。」

山田薄荷は森川記憶の淡々とした口調を見て、まったく興味がないようだったので、これ以上話を続けず、ただ遅れないようにもう一度注意して、電話を切った。

手元に携帯を投げ捨てると、森川記憶は服を着替え、化粧を始めた。身支度を整えると、ちょうど出発する時間になっていた。

寮を出る直前、森川記憶は鏡の前で自分を見つめた。鏡の中の少女は肌が白く、顔立ちが整っていて、完璧で欠点を見つけることができなかった。スカートは少し短く、露出した二本の長い脚はまっすぐで美しく、細いウエストと上向きのヒップは、一目見ただけで人を魅了するものだった。

森川記憶は満足げに唇を軽く噛み、レトロな口紅が唇に均一で自然に広がるようにし、バッグと携帯を手に取って寮を出た。

玉華台は森川記憶の学校からそれほど遠くなかったが、ちょうど退勤のラッシュ時間帯で、道路は少し混雑していた。森川記憶が到着した時には、個室の人はほとんど揃っていて、林田雅子はメニューを持って注文していた。

10人用のテーブルには、2つの空席しかなかった。一つは林田雅子の隣、もう一つは山田薄荷の隣だった。

森川記憶は山田薄荷との関係が良好だったので、全員に挨拶を済ませた後、山田薄荷の隣に座った。

料理が全て揃い、みんなが食べ始めても、林田雅子の隣の席はまだ空いていた。

食事会では酒が欠かせず、数杯飲んだ後、テーブルの雰囲気は賑やかになり始めた。

騒がしい中、テーブルの料理は次々と底を見せ、ウェイターがデザートを出し始めた時、林田雅子の携帯が鳴った。彼女は画面をちらりと見ただけで、目に笑みを浮かべ、急いで電話に出た。「到着したの？」

電話の相手が何を言ったのかは分からなかったが、林田雅子はまた口を開いた。彼女の声はもともと柔らかかったが、今はまるで水が滴り落ちそうなほど柔らかかった。「迎えに行くわ。」そう言いながら、林田雅子は電話を切り、立ち上がった。

「雅子さん、彼氏が来たの？」林田雅子は好奇心からの質問に対して、肯定も否定もせず、ただ嬉しそうに「人を迎えに行ってくる」と言い残し、急いで個室を出て行った。

5分もしないうちに、個室のドアが再び開かれ、部屋の中の人々は一斉に振り返って見た。森川記憶も例外ではなかった。先ほど急いで出て行った林田雅子が戻ってきたのだが、彼女の後ろには男性が一人いた。