森川記憶は必死に息を止め、まるで彫像のように、呆然と立ちつくしていた。
実際にはほんの数秒間立っていただけだったが、彼女にとっては一世紀が過ぎたかのように複雑で長く感じられた。
彼女は必死に感情を抑え、自分が制御を失ったり崩壊したりしないようにした。少しずつ衣服の襟を掴む指先の力を緩め、ゆっくりと体を真っ直ぐに立て直した。
彼女は泣くこともなく、騒ぎ立てることもなく、一言も残さなかった。まるで目の前の髙橋綾人が存在しないかのように、振り返って路地の出口へ向かった。
彼女は必死に足取りを制御し、みすぼらしく見えないようにしたが、それでも彼女の歩みは思わず速くなっていた。数歩歩いたところで、背後の髙橋綾人がまた声を出した。「それと、できることなら、今後二度と私の前に現れないでほしい。」
森川記憶の足がふらつき、危うく地面に倒れそうになった。次の瞬間、彼女は足を速め、急いで路地を飛び出した。
かなり遠くまで走った後、森川記憶はようやく立ち止まった。疲れを感じないかのように、彼女は道端でぼんやりと長い間立ちつくしていた。通りがかる人々が変な目で自分を見ていることに気づいて初めて、自分の服が髙橋綾人に引き裂かれていたことを思い出した。
彼が言ったあの言葉が再び耳元によみがえり、言い表せない痛みが心から全身に広がった。森川記憶はまぶたを伏せ、急いで学校の寮に戻った。
消灯時間が近かったため、ルームメイトたちはすでに寮に戻っていた。彼女が戻ってくるのを見て、すぐにみんなが口を開いた。
「記憶、神様に告白しに行ったの?うまくいった?」
「記憶、今から正式に熱愛中なの?おめでとう...」
「あれ?記憶、服どうしたの?」
森川記憶の目に涙が浮かび、何も言わずに直接トイレのドアを押し開け、中に駆け込んだ。ドアに鍵をかけ、水道の蛇口をひねると、ザーザーと流れる水の音に紛れて、力が抜けたように身をかがめ、顔を膝に埋めて、小さな声ですすり泣き始めた。
彼女の初恋、彼女の純真さは、このようにして生き埋めにされてしまった。
彼女の恋は、始まる前に、すでに惨めに敗北していた。
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髙橋綾人が森川記憶に二度と彼の前に現れないでほしいと言い、森川記憶は本当に二度と髙橋綾人の前に現れなかった。
大学入試が終わるとすぐに、中学校から祖母の家に住んでいた森川記憶は、彼女の若い時代全体を過ごした都市にさらに留まることなく、すぐに飛行機のチケットを予約し、両親がいる京都へ飛んだ。
時は流れ、歳月は水のように過ぎ去り、あっという間に森川記憶は京都に来て四年が経った。
同じ都市にいた時でさえ、森川記憶と髙橋綾人は交流がなかった。この四年間、二人は二つの都市に住み、遠く離れ、さらに何の接点もなかった。
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10月に近づいた京都は、まだ息苦しいほど蒸し暑かった。
森川記憶は宅配便を受け取るために階下に降りただけで、外に立っていたのはわずか2分だったが、すでに汗だくになっていた。
森川記憶は汗だくになる感覚が嫌いで、寮に戻ると、宅配便も開封せずに、まずバスタオルとパジャマを持ってトイレに入った。
ルームメイトたちは全員外出中で、寮には森川記憶一人だけだった。退屈だったので、シャワーを浴びた後、髪を乾かし、ベッドに上がって先ほど見ていた映画の続きを見た。映画が終わる頃には、ちょうど眠気が襲ってきた。ルームメイトたちがまだ戻る気配がないのを見て、彼女は思い切って携帯を置き、目を閉じて眠りについた。
アラームをセットしていなかったため、森川記憶はかなり長く眠ってしまった。携帯の着信音が鳴るまで、彼女は目を覚まさなかった。