第22章 あなたの寛大さに感謝します(2)

森川記憶は瓶のキャップを開けたが、水を飲まずに、頭を回して林田雅子を見た。「どうしたの?」

「あの、生理が来ちゃって……」

森川記憶は最初、林田雅子の言葉の意味が分からなかったが、彼女の頬が薄く赤くなっているのを見て、やっと鈍感ながらも林田雅子が生理が来たことを理解した。

鈴木達は少し離れた温泉の湯船にいた。彼に聞こえないように、林田雅子は手で口を覆い、森川記憶の耳元に近づき、声を低くして続けた。「……さっきおかしいと思って、水を買いに行ったんだけど、トイレに寄ったら本当に来てたの。今月はなぜか何日も早いし、全然準備してなかったの。それに温泉に入ったせいか、量が多くて。スーパーはフロントのある棟にあって、温泉や私たちの部屋からは少し遠いし、一泊だけだから替えのズボンも一枚しか持ってないし。行ったり来たりしてる間に服に付いちゃうかもしれないから、記憶ちゃん、生理用ナプキンを買ってきてくれない?」

林田雅子の頼みは大したことではなかったので、森川記憶は深く考えずに「うん」と答え、寝椅子から立ち上がった。

「ありがとう、記憶ちゃん。本当に申し訳ない」林田雅子は眉の端に明るい笑みを浮かべた。

「大丈夫よ」森川記憶は返事をして、更衣室の方へ向かった。

彼女が数歩も歩かないうちに、林田雅子は何かを思い出したように小走りで追いかけ、森川記憶の前に来た。「そうだ、記憶ちゃん、ここに持ってこなくていいわ。生理が来たから温泉にも入れないし、これからすぐに部屋に戻るつもりだから、ホテルの部屋に届けてくれる?」

「うん、いいよ」森川記憶は答えた。

「ありがとう」林田雅子はもう一度お礼を言い、森川記憶が歩き出そうとしたとき、さらに付け加えた。「忘れるところだった、記憶ちゃん、私1808号室に引っ越したの。もうあなたの隣じゃないわ」

森川記憶はうなずき、何も言わず、立ち止まることもなく、そのまま更衣室に入った。

……

温泉リゾートは数千平方メートルの広さがあり、夜はシャトルバスがないため、森川記憶はフロントまで歩くしかなかった。

スーパーに着くと、まず林田雅子のために生理用ナプキンを一つ選び、それから温泉の後みんなが空腹になるだろうと思い、お菓子をかごいっぱいに選んでから会計を済ませ、フロントを出た。

森川記憶はリゾートのホテル部分に戻り、エレベーターで直接18階に上がった。

最上階はすべてスイートルームで、部屋と部屋の間隔が少し離れていた。森川記憶は2分近く歩いて、やっと林田雅子が言っていた1808号室を見つけた。

ドアベルを押し、森川記憶は少し待ってから、ホテルのドア越しに中からサクサクと足音が聞こえ、すぐにドアが開いた。

森川記憶は林田雅子だと思い、話そうとしたが、ドアを開けた人はドアの前に立っている人を見もせず、さらっと「荷物を持ってきて」と言い残し、すぐに横のバスルームに入った。

森川記憶はドアを開けた人が誰なのかはっきり見えなかったが、声でそれが誰だか分かった。

彼女はてっきり林田雅子があの甘やかされたお嬢様で、普通の部屋に慣れず、自費でスイートルームに泊まっていると思っていたが、結局これは髙橋綾人の部屋だったのか……