髙橋綾人は手を上げ、もう一度煙草を強く吸い込んだ。煙の向こうから、彼は菅生知海を一瞥したが、やはり口を開こうとしない様子だった。
「どうした?映画大学が居心地悪いのか?」菅生知海はまた口を開き、映画大学について言及すると、さらに多くの言葉を続けた。「お前さ、一流大学で学士号を取って、学校はアメリカの大学への推薦まで決まっていたのに、結局これまでの学業を捨てて、映画大学に来たんだろう?」
「正直、何と言えばいいのか分からないよ。映画大学が一流大学と比べられるか?アメリカと比べられるか?」
「万が一、お前が勉強に飽きたとしても、大学でのこれまでの実績があれば、どこかの上場企業のCEOになるのも問題ないだろう?」
「さらに言えば、CEOになりたくないとしても、家に帰って髙橋企業を継ぐという選択肢もあるだろう?」
「どの選択肢を取っても、映画大学で一からやり直すよりはマシだろう?」
「どうしても理解できないんだ。なぜ明るい未来と無限の可能性がある道を選ばずに、わざわざゼロからやり直す道を選んだんだ?こうすることで、これまでの努力と奮闘を全て無駄にしてしまうじゃないか?」
最後には、当事者の髙橋綾人は動揺していないのに、菅生知海の方が興奮して残念がっていた。「言ってみろよ、どれだけ思い詰めれば、こんな選択をするんだ?正直言って、本当に惜しいと思うよ。他のことは心配していないが、今あまりにも多くを捨てて、いつか後悔する日が来るんじゃないかと心配なんだ。」
髙橋綾人はずっと黙ったままで、話そうとする様子は全くなかった。
一方的に話し続けていた菅生知海は、少し間を置いて、しばらくしてから、何かを思いついたかのように髙橋綾人の方を向き、少し不確かな口調で尋ねた。「綾人、お前が映画大学に来たのは何か隠された理由があるんじゃないか?」
「大学で四年間一緒だったけど、お前が監督に興味があるなんて一度も聞いたことがない。だから夢を語るのはやめて、正直に言ってくれ。誰かのために来たんじゃないのか?」
髙橋綾人の煙草を挟んだ指先が、少し強張った。
少しして、彼は煙草を灰皿に近づけ、軽く灰を落とした。灰がさらさらと落ちていった。
菅生知海は探偵のように分析を続けた。「大学の四年間、お前は毎月京都に行っていたよな。誰かに会いに行っていたんじゃないのか?」
「男か女か?」
「お前が京都に来たのは、その人と関係があるんじゃないのか?」
「そしてその人も、映画大学にいるんじゃ……」
「店員さん、お会計を。」一晩中黙っていた髙橋綾人は、ようやく菅生知海が今日彼に会ってから初めての言葉を発した。
「まさか本当に当たっていたのか……」
菅生知海の言葉が終わらないうちに、伝票にサインした髙橋綾人は煙草を消すと、再び先に席を立った。
「ゴールデングローリー」と「帝国ホテル」はあまりにも近かったため、二人は歩いてきていた。
ゴールデングローリーの入り口に戻ると、菅生知海は上階のまだ終わっていない麻雀室を指さした。「もう少し上で遊ばないか?」
「いや、明日の朝、授業があるから。」
菅生知海は髙橋綾人が本当に上がる気がないことを見て取り、彼に別れを告げて上階へ向かった。
髙橋綾人はゴールデングローリーの入り口に少し立ち止まってから、駐車場へ向かった。
車を運転しながら、髙橋綾人は学校へ向かった。
車窓の外の光が明滅し、彼の端正な顔に当たっていた。彼はまっすぐ前を見つめ、表情は穏やかに見えたが、学院通りに近づいたとき、突然ブレーキを踏んだ。