髙橋綾人は前方の空っぽな通りをしばらく見つめてから、ゆっくりと頭を回し、車の窓越しに道端を見た。
薄暗い街灯の下、一人の少女が体を丸め、地面にしゃがみ込んでいた。
彼女は頭を垂れていて、彼は彼女の顔を見ることができなかったが、それでも一目で彼女が誰なのかわかった。
彼女の肩はわずかに震えていて、泣いているようだった。
髙橋綾人はその光景を見つめ、ハンドルを握る指先に、制御できないほど少しずつ力が入っていった。
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森川記憶は道端にしゃがみ込み、頭を膝に埋め、片手で腹部を強く押さえ、もう片方の手を強く握りしめ、眉間にしわを寄せていた。
さっきまで大丈夫だったのに、今になって何の理由もなく腹部が突然痛み出した。
最初はわずかな刺すような痛みで、脇腹が痛んだだけだと思い、気にせず学校の門に向かって歩き続けたが、歩けば歩くほど腹部の痛みは強くなり、最後には息もできないほど痛くなり、両脚まで痛みで弱り、もう歩けなくなった。彼女は腹部を押さえながらゆっくりとしゃがみ込み、痛みが和らぐのを待った。
約4、5分ほど経って、痛みはかなり和らいだ。森川記憶は震える両脚で立ち上がろうとしたとき、突然腹部から鋭い痛みが再び走った。今回の痛みは先ほどよりも何倍も激しく、まるで腹の中でナイフで切り裂かれているかのようだった。彼女は苦しみのうめき声を上げ、涙がほとんど溢れそうになり、そしてまた地面にしゃがみ込んだ。
この波のように襲ってきた痛みは、和らぐどころか、ますます激しくなった。森川記憶は痛みで全身が震え始め、この痛みが尋常ではないことに気づき始めた。彼女は本能的に手を伸ばして携帯電話を探り、助けを求めようとした。
痛みで指先が制御できないほど震えていた。彼女は大変な努力をして、やっとバッグを自分の目の前まで引き寄せた。バッグのジッパーを開けようとしたとき、また心臓を刺すような痛みが走り、森川記憶は痛みで体が揺れ、ほとんど地面に倒れそうになった。彼女は何とか体を支え、息を止め、しばらく静かに待ってから、歯を食いしばって指先をバッグのジッパーに伸ばした。そして彼女は痛みで力が抜けたように、全く力が出せないことに気づいた。ジッパーを開けるどころか、ジッパーさえも握れなかった。