森川記憶は本当にお腹が空いていた。トイレから出てくると、椅子を引いて、テーブルに座り、山崎絵里が持ってきた夕食を食べ始めた。
料理を見ると、第一食堂のものだったが、味が少し違っていて、いつもより美味しかった。
森川記憶は不思議に思い、思わず振り向いて山崎絵里に尋ねた。「これって第一食堂の料理?」
「そうだよ……」山崎絵里はスマホの画面を見つめながら、指先を素早く動かしていた。
「なんか、いつも食べてるのと違う気がするんだけど」
「そう?」山崎絵里は目をちらつかせ、それから黙ってしまった。しばらくして、おそらくゲームが終わったのだろう、スマホを置くと、森川記憶に向かって再び口を開いた。「お腹が空きすぎて、錯覚してるんじゃない?」
森川記憶は山崎絵里の言うことにもっともだと思い、うなずいた。「たぶんね」
山崎絵里はその話題を続けず、ベッドから降りてきて、まるで森川記憶に重要な秘密を共有するかのように、椅子を引いて、森川記憶の隣に座った。そして真面目な表情で話し始めた。「記憶ちゃん、知ってる?今日の午後、すごく信じられないニュースを聞いたんだ!」
森川記憶は振り向いて山崎絵里を見た。口に食べ物が入っていたので、声はやや不明瞭だった。「どんなニュース?」
「林田雅子のことなんだけど、彼女の彼氏が高橋先輩じゃないってことを今知ったんだ!」
高橋先輩……森川記憶はこの三文字を聞いた瞬間、午前中に髙橋綾人の家で起きたことを思い出し、スプーンを持つ指先が少し震えた。目を伏せ、表情を平静に保ったまま黙っていた。
山崎絵里は自分の驚きのニュースを一方的に話し続けた。「というか、彼女は最初から高橋先輩の彼女じゃなかったんだよ!彼女は最近確かに新しい彼氏ができたけど、その彼氏は私たちの学科の、家がちょっとお金持ちで、彼女を服を着替えるように変える遊び人の山本朔なの。私が思うに、山本朔は林田雅子と遊んでるだけだと思う……」