第41章 見える場所(1)

森川記憶は表情を変えず、依然として髙橋綾人を見ようともせず、ただ少し力を入れて自分の手首を彼の手から引き離し、振り返ることなく歩き去った。

彼女の冷静さと無関心さに、髙橋綾人の胸の中の怒りは収まるどころか、さらに激しくなった。彼は目を閉じ、深呼吸をして胸の中の苛立ちを鎮めようとしたが、目を開けると、ベッドに置かれた一束のお金が目に入り、心はさらに詰まる思いになった。振り返ると、寝室の入り口から消えようとしている森川記憶の後ろ姿が見え、感情が再び制御を失い、井上ママに向かって怒鳴り始めた。「何をぼんやり立っているんだ?早く来て、寝室で彼女が触ったものを全部捨てろ!汚らわし...」

最後の「い」という言葉がまだ出てこないうちに、髙橋綾人は目の端で少女の姿がわずかに揺れるのをはっきりと見た。彼は突然口を閉じた。