第43章 見える場所(3)

井上ママは視力がとても良く、髙橋綾人との間に距離があったにもかかわらず、彼の携帯画面をちらりと見ることができた。

画面の文字までははっきり見えなかったが、彼が受信したメッセージが数通あることは分かった。内容は長くなく、各メッセージはほんの数文字程度だった。

しかし、その短い数行を彼は非常に真剣に読んでいた。まるで重要な情報を見逃すことを恐れているかのようだった。

井上ママはこれ以上髙橋綾人の邪魔をせず、静かに書斎から退出し、ついでにドアを閉めた。

書斎の空気は、一気にさらに静寂さを増した。

髙橋綾人はまだ目を離さず、携帯画面に表示された山崎絵里からのメッセージを見つめていた。

「高橋先輩、記憶ちゃんは病院に行ってきました。医者は大丈夫だと言っていました」

「記憶ちゃんは寮に戻るとすぐに眠りました。起きた後、あなたが送ってくれた食事も食べました」

「あなたが私に伝えるよう言った林田雅子についての情報は、一言も漏らさず記憶ちゃんに伝えました」

「記憶ちゃんはさっき薬を飲んで、お風呂に入って、少しドラマを見てから、また寝ました」

長時間触れられなかった携帯は自動的にロックされたが、髙橋綾人はそれに気づいていないかのように、依然として動かずに携帯の反応のない画面を見つめていた。

どれくらい時間が経ったか分からないが、携帯がまた「ピンポン」と鳴り、画面が明るくなった。髙橋綾人はロック画面に表示された新しいメッセージを一目で確認した。やはり山崎絵里からのものだった:「高橋お兄さん、なぜ記憶ちゃんにそんなに優しいんですか?」

なぜ?

髙橋綾人はこの三文字をしばらく見つめた後、ようやくまぶたを軽く瞬かせ、顔を上げて窓の外の無数の灯りを見つめた。

最近、この「なぜ」という言葉は彼が最も頻繁に耳にする言葉になっていたのではないだろうか?

先日、温泉リゾートで偶然鈴木達に会った時、彼が映画大学に行ったことを知った鈴木は「綾人さん、なぜそんなことをするんですか?」と尋ねた。

昨日、帝国ホテルで菅生知海も彼に聞いた。「どうしても理解できないんだ。なぜ明るい未来と無限の栄光への道を捨てて、わざわざゼロからやり直す道を選ぶんだ?」

鈴木達は彼が狂ったのではないかと言い、菅生知海は彼が考えが浅いと言った。