第52章 黙れ(2)

髙橋綾人がいる階に到着すると、森川記憶は玄関の前で少し躊躇してから、手を上げてインターホンを押した。

インターホンは長い間鳴り続けたが、応答はなく、自動的に止まった。

髙橋綾人は家にいないの?おかしいわね、お母さんは確かに彼に今夜来ると伝えたはずなのに……森川記憶は眉をひそめ、再び手を上げてインターホンを押した。

最初と同じように、最後まで鳴り続けたが、ドアはびくともせず閉まったままで、誰かに開けられる気配はまったくなかった。

もしかして何か急用があって、急に出かけたのかもしれない?

森川記憶は少し考え込んだ後、これでもいいかもしれないと思った。彼女は来たけど、彼は家にいなかった。お母さんには言い訳ができる。明日、宅配便で送って、その時にお母さんに授業が忙しくて、二度目に来る時間がなかったと伝えればいい……