第17章 私と彼はありえない(7)

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翌日は月曜日で、先週と同じように、週末まで髙橋綾人は森川記憶の世界に現れることはなかった。

……

森川記憶には鈴木達という高校の同級生がいた。彼は京都の大学に通っており、同じ都市にいるため、二人はずっと連絡を取り合っていた。

鈴木達は明るい性格で、話し方もユーモアがあり、森川記憶の寮の仲間たちとも仲良くなっていた。さらに彼は山田薄荷に少し興味を持っていたので、時々、森川記憶の寮の仲間たちを食事に誘うのが好きだった。

森川記憶が金曜日に鈴木達から電話を受けたとき、いつものように食事の誘いだと思っていたが、今回は彼が太っ腹にも寮の全員を温泉に招待してくれることになった。

温泉リゾートは北郊外にあり、森川記憶たちは土曜日の午後に出発した。リゾートに到着してチェックインの手続きを済ませると、ちょうど夕食の時間になっていた。

みんなはいったん自分の部屋に荷物を置きに行き、20分後にリゾートのレストラン「牡丹亭」で会う約束をした。

森川記憶はずっと、夕食は寮の仲間と鈴木達だけだと思っていた。「牡丹亭」に着いて、椅子の背もたれに淡々ともたれかかり、少し顔を傾けて鈴木達の話を聞いている髙橋綾人を見たとき、森川記憶は突然、鈴木達の誘いを受けたことを少し後悔した。

森川記憶の後悔に比べて、山崎絵里の言葉は驚きに満ちていた。「高橋先輩?」

女の子たちに髙橋綾人を紹介しようとしていた鈴木達は、一瞬戸惑った。「知り合いなの?」

「もちろん知ってるわよ、高橋先輩は私たちの雅子さんの……」山崎絵里は考えもせずに口を開いたが、彼女の言葉がまだ終わらないうちに、彼女の隣に立っていた林田雅子が突然山崎絵里の腕を引っ張り、彼女に頭を振って、これ以上話さないように合図した。そして素早く彼女の言葉を引き継いで補足した。「……高橋お兄さんは私の友達だから、みんな知ってるのよ。」

山崎絵里は不思議に思ったが、それ以上は何も言わなかった。

林田雅子は慎重に髙橋綾人を見て、男性の表情にあまり変化がないことを確認すると、ほっと息をついて続けた。「なんて偶然なの、みんな知り合いだったなんて……」

「そうだね、偶然だね……」鈴木達も感慨深げに一言言った後、全員が揃ったのを見て、すぐにウェイターを呼んでメニューを持ってきてもらった。彼は料理を注文せず、メニューを髙橋綾人の前に渡した。「綾人さん、あなたが注文して。」

髙橋綾人は遠慮せず、片手でメニューを開き、一言も言わず、ただ長くて美しい指で時々上を指さした。

「僕と綾人さんは同郷で、綾人さんは僕のリーダーなんだ。」鈴木達はいつも話好きで、誰も聞いていなくても、髙橋綾人がここにいる経緯を説明し始めた。「何年経っても、綾人さんは変わらないね、相変わらず目立つよ。さっきロビーで、一目で綾人さんを見つけたよ。」

林田雅子はこの言葉を聞いて、顔色が急に悪くなった。

昨日、彼女は髙橋綾人に電話をかけて、週末の食事に誘ったが、彼は「考えておく」と言った。

彼女は思いやりがあり、素直に彼に言った。もし時間がなければ、大丈夫だと。彼女たちの寮は土曜日にちょうど予定があると。

彼女は彼ともっと話せるように、誘ったのは鈴木達で、山田薄荷に興味があること、森川記憶の高校の同級生であること、温泉に行く予定だということまで彼に伝えた。

彼はその時、電話で何の反応も示さなかったが、今日、温泉リゾートで鈴木達と偶然出会ったかのように現れた。