第39章 彼女に自分で出ていかせる(9)

まさか彼は……

どういうわけか、森川記憶の頭に突然林田雅子のことが浮かんだ。彼女はまるで急所を押さえられたかのように、その場に立ち尽くして動けなくなった。しばらくしてから、やっと先ほどの思考の流れに戻ることができた。

林田雅子のために……謝っているの?

彼は林田雅子の彼氏で、山田薄荷と山崎絵里は林田雅子が髙橋綾人の家に引っ越したと言っていた。昨日も彼女は二人が一緒に学校のスーパーの入り口にいるのを目撃した。

あの温泉リゾートで、林田雅子は彼女にあんなひどいことをして、寮にも住まなくなった。彼氏として、自分の彼女とルームメイトがこんなに仲たがいしているのは望んでいないはずだ。だから彼は我慢して、彼女にお粥を飲ませたり、薬を飲ませたりして、謝意を表しているのだろう。昨夜の救助のお礼として、林田雅子との過去のいざこざを水に流してほしいと願っているのだろう……