彼女は隣に座っている二人の女の子と、おしゃべりしながら笑いながら、当時流行していたゲームで遊んでいた。
その二人の女の子については印象があった。どちらも彼女のクラスメイトで、普段キャンパスで彼は彼女が彼女たちと一緒にいるのをよく見かけていた。そのうちの一人は少し有名な子役で、確か何とかという歌手だった。
夏の終わりの明るい日差しが窓から差し込み、彼女の白い顔に当たり、時折見せる笑顔を清らかで驚くほど美しく引き立てていた。
髙橋綾人はタバコの箱を開ける動作を止め、彼女から目を離さず見つめ、うっとりとしていた。
ネットカフェで彼を知っている人が彼の横を通りかかり、敬意を込めて「綾人さん」と呼びかけるまで、彼はようやく視線を戻した。
挨拶してきた人に適当に返事をし、その人が去った後、髙橋綾人は上の階に向かいながら、森川記憶のいる方向をもう一度ちらりと見た。高い位置に立っていたので、彼はようやく気づいた。ネットカフェでは彼だけが彼女の美しさに見とれていたわけではなく、彼女の後ろ少し離れたところに座っている不良グループもいたのだ。
その不良グループについて、髙橋綾人は知っていた。彼らは一中の前のボス竹田章に従っていて、中学卒業後は学校に行かなくなったが、年齢が若くて行くところがないため、よくグループで学校近くのネットカフェに集まってぶらぶらしていた。
このグループについての噂も最近耳にしていた。彼らは一中のどの女子生徒が可愛いかを研究し、放課後にその女子生徒を捕まえて、無理やり一緒に遊びに行かせるという。
竹田章はその不良グループの真ん中に座り、森川記憶を上から下まで眺めながら、時々横にいる子分に彼女を指さして何かをささやいていた。
ネットカフェは騒がしく、距離もあったので、髙橋綾人は竹田章が何を言っているのか分からなかったが、彼のその様子は何故か嫌悪感を抱かせた。まるで...自分のものが他人に狙われているかのように。
竹田章は森川記憶について二言三言評価した後、立ち上がり、彼女の座っている方向に歩いていった。彼は森川記憶の後ろを通りかかる時、わざと足をくじいたふりをして、彼女の椅子の背もたれに倒れかかった。
髙橋綾人は竹田章の手が森川記憶の肩に置かれるのをはっきりと見た。