第80章 私が懐かしむのは、共に過ごした若き日々(10)

髙橋綾人はタバコの吸い殻をゴミ箱に捨て、しばらくその場に立っていた後、車のドアを開けて乗り込んだ。

彼は慣れた手つきで車を運転し、自分の住まいに向かって走り出した。途中で突然、車を路肩に停め、スマホを取り出してナビを開き、「名古屋」と入力した。ルートを設定し終えると、再びアクセルを踏み、前方の交差点で曲がり、高速道路の入口へと猛スピードで向かった。

髙橋綾人は日が暮れてから夜明けまで、そして正午になってようやく名古屋の高速料金所に到着した。

高速料金を支払い、スマホのナビを切ると、髙橋綾人は慣れた道のりで名古屋の市内へと向かった。

彼はまず髙橋家に戻った。家族は誰も彼が帰ってくることを知らず、家政婦以外は誰もいなかった。

家政婦は彼を見て非常に喜び、彼の周りを取り巻きながら次々と声をかけた。「坊ちゃま、急に戻ってこられたんですね?お腹はすいていませんか?何か食べますか?ご両親に電話しましょうか?坊ちゃまが帰ってきたと知ったらきっと喜ばれますよ…」