第112章 私がこんなことをする価値はない (2)

森川記憶は眉間を少し寄せた。幻聴かどうか確かめる暇もないうちに、突然教室の後ろのドアから「バン」という大きな音が響いた。

森川記憶は驚いて心臓が「ドクン」と二回激しく跳ね、思わず振り返って後ろのドアを見た。

少し古びたドアは、何かに強く打ちつけられたらしく、埃がパラパラと落ちていた。

ドアが二回揺れ、まだ安定しないうちに、また耳をつんざくような「バン」という音が響いた。

ちょうど後ろのドアを見ていた森川記憶は、一瞬前まで無事だったドアが、次の瞬間に地面に倒れるのを目の当たりにした。

その後、森川記憶は黒い革靴が、割れたドアの上に踏み入れるのを見た。

なるほど、本当に誰かが現れたのだ……彼女が最も絶望し、最も無力だった時に。

森川記憶は、さっきまで死んだように沈んでいた自分の心が、少しずつ鼓動を始め、蘇り、生き生きとしてくるのをはっきりと感じた。