第306章 私たちは昔に戻れますか?(6)

彼の心は何か鋭いもので突かれたかのように、チクチクと痛み、喉までもが酸っぱく感じられた。

彼は本能的に目を伏せ、一瞬よぎった暗い表情を隠した。

目の前の三人の女の子はまだくすくす笑いながら冗談を言い合っていたが、彼は彼女たちが次に何を言うのか聞く気にもなれず、静かに立ち上がって離れていった。

……

三人の女の子は誰も目の前から人がいなくなったことに気づかず、依然として山崎絵里のスマホを覗き込みながら、ひそひそと話し続けていた。

約10分ほど経って、山田薄荷がトイレに行こうとし、山崎絵里も同じ考えだったので、二人が前後してソファから立ち上がった時、森川記憶がふと顔を上げて、向かいに座っていた髙橋綾人と菅生知海がいないことにようやく気づいた。

「あれ?高橋先輩と彼の友達はどこ?」山崎絵里も丁度向かいの空っぽのソファに目をやり、思わず声を上げた。