第305章 私たちは昔に戻れますか?(5)

田中白が立ち去る前に、さりげなく店員を呼び、森川記憶の食べ終わった麻辣湯の片付けを頼んだ。

店員がトレイを持ち上げ、布巾でテーブルを拭いて立ち去ろうとしたとき、山田薄荷が声をかけた。「お酒を3杯お願いします。」

菅生知海の話を聞いていた髙橋綾人は、松の実の殻を剥く動作を一瞬止め、口を開いた。「ホットミルクを一杯ください。」

「かしこまりました。少々お待ちください。」店員は礼儀正しく下がった。

三人の女の子が集まると、どうしてもひそひそ話をしてしまうものだが、向かいの髙橋綾人と菅生知海が真剣な話をしていたため、森川記憶は山崎絵里と山田薄荷に声を小さくするよう注意した。

森川記憶は暇だったので、麻辣湯を食べる前と同じように、また松の実を手に取って食べ始めた。

麻辣湯と松の実をたくさん食べた森川記憶は喉が渇き、グラスを手に取って飲もうとした瞬間、髙橋綾人の手が予告なく伸びてきて、彼女の指先からグラスを奪い取った。