第269章 公正はなく、あなたが間違っていて彼女が正しいだけ(9)

髙橋綾人は視線を佐藤未来に向けた。「すまないね」

佐藤未来は秘書のように髙橋綾人に無理強いせず、軽く頷いて、医療キットを抱えて髙橋綾人のスイートルームを出た。

……

佐藤未来が来たとき、森川記憶は髙橋綾人が持ってきた夕食を食べ終えたところだった。彼女が立ち上がって片付けようとしたとき、ノックの音が聞こえた。

ドアを開けると佐藤未来がいて、森川記憶は一瞬驚いた後、ドアから離れて佐藤未来を招き入れた。

彼女は佐藤未来に座るよう促しながら、テーブルに向かい、まず食べ残した食事を片付けようとした。

佐藤未来は医療キットを置くと、彼女の行動を見て、数歩近づき、彼女より先に手際よくテーブルをきれいに片付けた。

森川記憶は腰に怪我をしていたため、佐藤未来ほど素早く動けず、彼女に向かって「ありがとう」と言うしかなかった。