第313章 『方圓数里』(3)

「あなたの周りに留まりたい、私の心、返してもらえないならあなたにあげる。」

「愛してもいいし、愛さなくてもいい、私はどんな形でもあなたに従う。」

ここまで歌った髙橋綾人は、突然まぶたを上げ、視線をゆっくりと森川記憶に向けた。

彼女はちょうど彼を見つめていた。彼と彼女の視線が交わり、彼の口から歌い続けた。「なぜなら私はあなたを愛している、それはあなたには関係ないことだから。」

彼があまりにも頑固で、プライドが高すぎたのだ。とっくに後悔していたのに、認めようとせず、引き延ばし続け、彼女が千歌に陥れられ、彼女がベッドで3年間昏睡状態になり、彼が彼女のために映画大学に来たのに、彼女に頭を下げようとしなかった。

彼女が千歌に反撃して怪我をするのを見るまで、彼女が彼のせいで命を落としかけたことを知るまで、彼は悔い改めなかった。

彼の成長は遅すぎ、理解するのが遅すぎ、愛を学ぶのが遅すぎた。

だからこそ彼女は、彼が好きから愛へと変わる過程で、あらゆる屈辱と苦しみを味わった。

彼はこれらの言葉を全て彼女に伝えたかったが、彼が気づいた時には、彼と彼女の間はあまりにも遠く離れ、彼女は彼の言葉を信じなくなっていた。

彼は歌うことが好きではなく、歌ったこともなかった。この曲さえも、突然の思いつきだった。

彼はただ、さっきバルコニーで言えなかった心の内を、歌に変えて彼女に聞かせたかっただけだ。

「私の愛は、方圓數里に広がっている。」

音楽が止み、髙橋綾人の歌声だけがマイクからそっと流れ出た。

「近くにいれば、あなたの息遣いが聞こえる。」

彼の目は、まだじっと森川記憶を見つめていた。無限の深い感情が、彼が再び歌い始めると、彼の体からゆっくりとあふれ出てきた。

「あなたが振り向けば、私はここにいる。」

記憶ちゃん、今やっと分かった、私があなたを愛していることは既成事実で、あなたが私を愛するかどうかは重要なことではない。

歌が終わり、穏やかな音楽がまた流れ始めた。

髙橋綾人はマイクを唇から離さず、先ほどの姿勢のまま、森川記憶をじっと見つめ続けた。

距離があったにもかかわらず、森川記憶は彼の目の中の熱さをはっきりと感じることができた。まるで室内のすべての温度と光を集めたかのようだった。

彼女の錯覚かもしれないが、彼の目が話しているように感じた。