高橋綾人は直接本題に入った。「記憶ちゃんから連絡あった?」
「ないよ……」山崎絵里は少し考えてから、詳しく答えた。「……3日前の夜、LINEで話した時、明後日京都に帰るって言ってたけど、この2日間はあまり連絡取ってないな。」
「そう……」高橋綾人は短く返事をすると、黙り込んだ。
山崎絵里はしばらく待ったが、高橋綾人が何も言わないので、再び口を開き、心の中の疑問を口にした。「高橋先輩、何かあったの?」
高橋綾人は我に返り、淡々とした口調で答えた。「何でもない。」
「そう……」山崎絵里は馬鹿ではなく、高橋綾人が彼女に話したくないのだと理解し、空気を読んでそれ以上質問しなかった。
約2秒後、山崎絵里はまた口を開いた。「……高橋先輩、こうしよう。私が記憶ちゃんに連絡を取ってみるから、連絡が取れたらすぐに先輩に知らせるね。」
「ありがとう。」高橋綾人は礼儀正しくお礼を言い、電話を切った。
高橋綾人は携帯の画面をしばらく見つめた後、再び森川記憶に電話をかけたが、やはり電源が切れていた。
切断ボタンを押すと、高橋綾人はさっきのように頻繁に森川記憶に電話をかけるのではなく、携帯を握りしめたまま床から天井まである窓の前に歩み寄り、外の眩しい陽光を見つめながら、ぼんやりと考え込んだ。
どれくらい時間が経ったか分からないうちに、背後からノックの音が聞こえた。
高橋綾人は振り返り、ドアまで歩いて開けた。
田中白だった。彼を部屋に入れることなく、そのままドア口で尋ねた。「どうだった?」
「高橋社長、森川さんは朝の6時45分に部屋を出られました。どこにも寄らず、直接エレベーターで下に降りてホテルを出られ、それ以降戻ってきていません……」
なるほど、6時過ぎには目を覚まして出て行ったのか。彼が想像していたよりもずっと早かった……
高橋綾人は無言で唇を軽く噛み、声を出さずに田中白の報告を静かに聞いていた。