第397章 目覚めた翌日(7)

田中白はドアを閉め、髙橋綾人の後を追ってトイレの入り口まで行った。

田中白がまだ口を開いて親切に「何か食べますか」と尋ねる前に、トイレの入り口に人が立っていることに気づいた髙橋綾人は、顔を上げ、鏡越しに彼を一瞥し、淡々とした口調で先に言った。「森川記憶はどこだ?」

田中白は質問に一瞬戸惑い、2秒ほど経ってから、急いで口に出かかった言葉を飲み込み、別の言葉で疑問を口にした。「森川さんですか?彼女はずっとあなたと一緒だったのではないですか?」

髙橋綾人は眉間にしわを寄せた。「彼女はかなり早く起きたんじゃないのか?食堂に食事をしに行かなかったのか?」

田中白は首を振った。「いいえ、朝食も昼食も、私はずっと食堂にいましたが、森川さんを見かけませんでした。」

髙橋綾人の心臓が激しく鼓動し、非常に不吉な予感が彼の心を覆った。

田中白は髙橋綾人の表情がどこか普通ではないことに気づき、再び声を出し、やや慎重な口調で言った。「高橋社長、どうしましたか?」

彼女は食堂で食事をしておらず、荷物もすべて部屋にある。まさか彼が先ほど考えたように、彼女が目覚めて、彼と彼女が一緒に寝ていたことを見て、怖くなって一人でどこかに隠れ、昨夜のことをどうすればいいのか悩んでいるのだろうか?

そう考えると、髙橋綾人は手に握っていたカミソリを洗面台に適当に投げ捨て、トイレを出て、自分の携帯電話を取り出し、森川記憶の電話番号を探して発信ボタンを押した。

約3秒後、信号が通じたが、聞こえてきたのは携帯会社の自動応答だった。「申し訳ありません。お掛けになった電話は現在電源が入っていません。」

電源が切れている?!

髙橋綾人の心の中の不安はさらに強まった。

彼女は昨夜酔った後、彼の電話番号をブラックリストに入れたが、彼はその後彼女の携帯電話を使ってブラックリストを解除したはずだ...もしかしたら、その時彼の手が震えて、確認ボタンを押さなかったのだろうか?

髙橋綾人はそう考えながら、田中白を見た。「君の携帯電話を貸してくれ。」

理由がわからない田中白は、心の中で髙橋綾人の様子がどうしたのかと不思議に思いながらも、素直に携帯電話を取り出し、画面のロックを解除して髙橋綾人に渡した。

髙橋綾人は携帯電話を受け取り、連絡先リストを開くこともなく、直接森川記憶の電話番号を入力して発信した。