車内の空気まで、薄くなったように感じた。
森川記憶は徐々に酸素不足を感じ始め、胸が痛くなり始めた頃、車は前方の出口から曲がり、フォーシーズンズホテルの正面にある噴水を回って、ホテルのロビー正面に停車した。
髙橋綾人がシートベルトを外したところで、ロビーの入り口で待っていた田中白が前に進み出て、森川記憶のためにドアを開けた。「森川さん」
森川記憶は田中白に微笑みを返し、車から降りた。
彼女が車の横に立ったとき、髙橋綾人はすでに車の前を回って彼女の前に立っていた。彼は車のキーを田中白に渡して駐車させるのではなく、傍に立っていたドアボーイに渡し、それから振り返って森川記憶に言った。「僕は上に行ってシャワーを浴びて、着替えてくるよ。その間、田中に2階のティールームに連れて行ってもらっていいかな?」