第409章 森川記憶、話し合おう(9)

たった二つの言葉で、森川記憶の心は突然震えた。彼女は思わず目を伏せ、彼への視線を隠した。

数秒が経ち、髙橋綾人の声が記憶の頭上から降りてきた。「記憶ちゃん……」

先ほどと同じように、彼は彼女の名前を呼んだが、今回は長く間を置かずに続けた。「……話し合おう」

髙橋綾人はそう言うと、森川記憶が手に持っていた袋とバッグに手を伸ばした。

記憶は本能的に手に力を入れ、バッグと紙袋をさらにしっかりと握りしめた。

昨夜、彼女が携帯の電源を入れた時、彼は何度も電話やメッセージを送ったが、彼女が応答しなかったため、彼はすでに田中白に警察の知人に連絡させ、彼女の携帯の信号から位置を特定させていた。

午前5時、田中白は彼女の正確な居場所を彼の携帯に送信した。

彼は時間を無駄にしたくなかった。彼女が目覚めて場所を離れるかもしれないと恐れ、直接車で駆けつけ、そしてどこにも行かず、ただ入り口で待っていた。

その時すでに彼は決めていた。今日はどんなことがあっても、彼女としっかり話し合うと。

そう考えながら、髙橋綾人は指先を森川記憶が持っているバッグと袋にさらに近づけ、彼の口調にも決意が滲んだ。「今すぐ、どこかに行って、ちゃんと話し合おう」

言い終わった後、髙橋綾人は自分が強引すぎることに気づき、少し口調を和らげて付け加えた。「いいかな?」

記憶は目を伏せたまま、終始髙橋綾人を見ようとせず、彼女の指先は物を掴む力を少しも緩めなかった。

彼女は実は先に家に帰り、しっかり食事をして、一眠りして、元気を取り戻してから、余光さんと彼に連絡するつもりだった。

しかし彼が彼女を見つけるとは思わなかった……どうせ早かれ遅かれ彼と話さなければならないのだから、そうであれば、躊躇う必要はない……

記憶はしばらく考えた後、何も言わず、ただ軽く頷いた。

髙橋綾人は彼女の反応を見て、直接彼女が持っているものに手を触れた。

記憶はしばらく躊躇った後、指先の力を緩め、彼に渡した。

彼女の荷物を持った後、髙橋綾人は少し体を横に向け、路肩に停めてある車を指さした。「行こう」

言い終わった後、彼はいつものように先に歩き出すのではなく、遠くに立ったまま、彼女が足を上げて自分の前を歩き始めるのを待ってから、ようやく足を上げ、彼女の後ろ約半メートルの距離を保ちながら、車まで歩いた。