第409章 森川記憶、話し合おう(9)

たった二つの言葉で、森川記憶の心は突然震えた。彼女は思わず目を伏せ、彼への視線を隠した。

数秒が経ち、髙橋綾人の声が記憶の頭上から降りてきた。「記憶ちゃん……」

先ほどと同じように、彼は彼女の名前を呼んだが、今回は長く間を置かずに続けた。「……話し合おう」

髙橋綾人はそう言うと、森川記憶が手に持っていた袋とバッグに手を伸ばした。

記憶は本能的に手に力を入れ、バッグと紙袋をさらにしっかりと握りしめた。

昨夜、彼女が携帯の電源を入れた時、彼は何度も電話やメッセージを送ったが、彼女が応答しなかったため、彼はすでに田中白に警察の知人に連絡させ、彼女の携帯の信号から位置を特定させていた。

午前5時、田中白は彼女の正確な居場所を彼の携帯に送信した。

彼は時間を無駄にしたくなかった。彼女が目覚めて場所を離れるかもしれないと恐れ、直接車で駆けつけ、そしてどこにも行かず、ただ入り口で待っていた。