第408章 森川記憶、話し合おう(8)

森川記憶はベッドに横たわり、天井を見つめながら、激しい痛みが過ぎ去るのをじっと動かずに待ってから、布団をめくってベッドから降り、洗面所へ向かった。

トイレに座りながら、彼女は東京から急いで出てきたため、何も持ってこなかったことを思い出した。今彼女が泊まっているホテルには、その日に着ていた服以外に何もなかった。現実に向き合うと決めたからには、以前の森川記憶に戻り、きちんとした姿でここを出て行かなければならない。

そう考えながら、森川記憶は携帯電話を開き、いつも利用している洋服店に連絡して、服を一式届けてもらうよう頼んだ。

彼女はいつも行く化粧品店にも連絡し、化粧品一式を購入して、即日配達でホテルに送ってもらうことも忘れなかった。

電話を切った後、森川記憶は洗面所でもう少し時間を潰してから出て、何も考えずにベッドで約1時間横になっていると、ホテルの内線電話が鳴った。

フロントからの電話で、服と化粧品を注文したかどうか尋ねられた。

彼女は「はい」と答えた。

受話器を置いてから約3分後、ドアをノックする音が聞こえた。

森川記憶がドアを開けると、

ホテルスタッフが二つの袋を手渡しながら言った。「お嬢様、ご注文の品です。」

森川記憶は小さな声で「ありがとう」と言って受け取り、スタッフが去った後でドアを閉め、洗面所へ向かった。

化粧品の包装を開け、鏡の前で丁寧にスキンケアをし、薄化粧を施した。

新しく届いた服に着替え、鏡の前で自分を見つめ、普段と変わらない様子であることを確認してから、部屋の自分の荷物をきちんとまとめ、持って階下へ降りた。

フロントに行き、森川記憶はルームキーを渡してチェックアウトを申し出た。

フロント係の女性は彼女の部屋番号を尋ねた後、コンピューターで操作し、電話で客室サービス部に連絡して部屋が確認されたことを確認してから、チェックアウト手続きを行った。

サインを済ませ、「またのお越しをお待ちしております」と微笑みながら言うフロント係の女性に、森川記憶は軽く微笑み返し、荷物を持ってホテルの玄関を出た。

ホテルの入り口に立ち、森川記憶が携帯電話を取り出し、タクシーを呼んで家に帰ろうとしたとき、目の端で前方から自分に向かって歩いてくる人影に気づいた。