第420章 なるほど、これが恋心なのか (10)

森川記憶は「ありがとう」と言って、車から出た。

彼女が立ち上がると、運転手は少し離れたベンチを指さして、「森川さん、高橋さんがここで少しお待ちくださいとのことです」と言った。

髙橋余光が真夜中に、彼女をこんな人里離れた山の中腹に呼び出したのは何のためだろう?

森川記憶は心の中で疑問に思いながらも、運転手に微笑みかけた。「ご迷惑をおかけしました。わかりました」

運転手:「では森川さん、どうぞお座りください。私は下で待機しております」

「はい」森川記憶はうなずいた。

運転手は森川記憶にお辞儀をし、丁寧に「失礼します」と言って、車に戻った。

車のエンジンがかかると、ヘッドライトが山の中腹を明るく照らした。

夏の山の景色は美しく、緑の木々が生い茂り、数え切れない野の花が鮮やかに咲いていた。