第570章 深い愛と彼との、思いがけない出会い(30)

髙橋綾人はタバコを吸っていなかった。指の間にタバコを挟んだまま、静かに少しの間そうしていた。タバコが燃え尽きて、指先が熱さを感じた時、彼はようやくタバコの吸い殻を消して、田中白の方を向いた。「宇佐警官のところ、連絡は取ったか?」

「はい、連絡しました。自称芡粉だという人たちは全員立件されました。宇佐警官と私たちが派遣した弁護士にも伝えましたが、和解は一切受け付けず、すべて法的手続きで進めます」と言った後、田中白は髙橋綾人が次に質問する前に、自ら続きを報告した。「あの記者たちについても調査済みです。今日の午後、彼らが森川さんを待ち伏せしたのは、千歌が森川さんの行方を漏らしたからです。明日はご指示通り、それぞれの記者に連絡を取ります」

髙橋綾人は軽く頷いただけで、それ以上は何も言わなかった。