「高橋社長、菅生社長をお探しですか?」
エレベーターホールに座っていた受付嬢は、髙橋綾人を知っていて、彼が出てくるのを見ると、すぐに立ち上がり、笑顔で迎えた。
髙橋綾人は受付嬢に一瞥もくれず、直接会社の中へ向かった。
「高橋社長、菅生社長は今会議中で、おそらくお迎えするのは難しいかと……」受付嬢は慌てて立ち上がり、髙橋綾人に伝えようとした。
髙橋綾人の足取りには、少しも緩む様子がなく、わずか十数秒で受付嬢を遠く後ろに置き去りにした。
受付嬢は仕方なく、髙橋綾人の後ろについてきた田中白に声をかけた。「田中特別補佐、菅生社長は本当に今会議中なんです。休憩スペースでお待ちいただければ……」
田中白は受付嬢に安心させるような笑顔を向け、彼女に先に仕事を続けるよう合図し、それから足早に髙橋綾人を追いかけた。
田中白がまだ秘書室に着く前に、前方から「バン」という音が響き、オフィス全体の人々が一斉にその方向を見た。数人の制御できない悲鳴も聞こえた。
田中白は急いで二歩前に進み、社長室のドアが髙橋綾人によって無理やり蹴り開けられたのを目にした。彼は怒りに満ちた様子で、秘書の制止も無視して、オフィスに踏み込んだ。
田中白は考える間もなく、駆け寄った。
秘書は田中白を見ると、救世主を見つけたかのように言った。「田中特別補佐、高橋社長はどうしたんですか?」
田中白は手を振り、言葉を交わす余裕もなく、オフィスに入った。
広々としたオフィスの中で、菅生知海と二人の外国人男性がソファに座り、目の前のテーブルには書類が山積みになっていた。
おそらく髙橋綾人がドアを蹴り開けた行動に驚かされたのだろう、三人の表情はいずれも困惑していた。
最初に我に返ったのは菅生知海だった。彼は髙橋綾人を見つめ、眉をひそめながら少し疑問を含んだ声で言った。「綾人さん?」
その後、彼と商談していた二人の外国人も声を上げた。
「この方は誰ですか?」
「菅生さん、何が起きたのですか?」