彼女の行動は、呆然としていた髙橋綾人を目覚めさせた。
髙橋綾人の最初の反応は、森川記憶の唇から逃れようとすることだった。
彼女の誘惑があまりにも大きく、自制できなくなるのが怖かったから……
彼が頭を少し後ろに避けようとした瞬間、少女は彼が逃げようとしていることに気づいたかのように、細くて柔らかい腕が彼の首に巻き付き、彼の頭をさらに強く下に押し付けた。それによって彼と彼女の唇と歯の接触はより親密になった。
少女の体から漂う甘い香りが、彼の鼻孔に絶えず入り込んでくる。
彼女の温かい舌先が、彼の唇の中で何度も舐め回していた。
おそらくこれが彼女が初めて積極的に人にキスをした時で、動きはぎこちなく単調だったが、それでも彼を魅了するには十分だった。
髙橋綾人は自分の脳内の血液が急速に逆流し、すべてが下腹部に流れ込むのを明確に感じた。
彼女の唇がまだ彼の唇から離れていない時、彼女の舌先が軽く彼の舌先をなぞり、彼の全身を震わせた。瞬時に、まだ切れていないビデオ通話のことも忘れ、残っていた理性さえも消え去った。彼女の舌が彼の舌から離れようとした時、本能的に彼女の舌を追いかけ、強引に絡め取り、そして手を上げて彼女の後頭部をつかみ、受け身から主導権を握り、激しく彼女にキスを返した。
ビデオ通話の中の夏目美咲が再び「綾人」と呼びかけたが、まるで空気に向かって話しているかのように、何の反応も得られなかった。
森川記憶と髙橋綾人は、ますます熱く情熱的にキスを交わした。
静かな室内に、次第に甘美な音が響き始めた。
森川記憶はぼんやりとした意識の中で、夏目美咲の泣き声を聞いたような気がした。しかし、その泣き声が具体的に何を意味するのか考える暇もなく、彼女の唇は髙橋綾人によって強く吸われ、胸の中の空気までもが少しずつ彼に吸い取られていった。
彼女の頭の中は完全に空白になり、世界には彼と彼女の二人だけが残された。
長い間、熱烈にキスを交わし、森川記憶が酸素不足で死にそうになったと感じた頃、髙橋綾人の唇がゆっくりと彼女の唇から離れ、そして彼は頭を彼女の首筋に埋めた。
彼の呼吸は少し荒く、胸が上下に激しく動いていた。
彼女の腰を抱く彼の手の力は、強くなったり弱くなったりを繰り返し、しばらくしてから、彼はゆっくりと頭を上げた。