第609章 発見された結婚証明書（12）

窓の外は日差しが異常なほど明るかった。

三万フィートの高空で、空は青く雲は白かった。

髙橋綾人は飛行機の窓の外の景色を眺めながら、ふと思い出した。彼が一流大学を離れて京都へ行くことを決めた前夜、大学の同級生たちを食事に招いたことを。その日、彼は少し酒を飲んでいた。酔っぱらうほどではなかったが、意識はやや朦朧としていた。

ある同級生が彼に尋ねた、なぜ良い将来を捨てて京都へ行くのかと。

同級生の口調には、少し残念そうな気持ちが込められていた。

しかし誰も知らなかった、あの夜の彼は、彼女との連絡が途絶えて以来、最も気分の良い夜だったことを。

なぜなら、彼はついに彼女がいる街へ行くことになったから。ついに彼女にもっと近づけるから。昼間は同じ太陽の光を浴び、夜は同じ街のネオンを見ることができる。

彼は少し笑って、ゆっくりと目を閉じた。普段は自分の心の内を人に見せることを好まない彼だったが、あの夜はあまりにも嬉しかったせいか、あるいは酒の勢いのせいか、こう言った：「愛する女性を探しに行くんだ」

「お前に好きな人がいるなんて！」

「京都に行くのは、彼女と結ばれるためなの？」

「もしかして結婚の予定？」

同級生たちは興味を持ち、次々と質問した。

彼は首を振り、しばらく考えてから答えた：「違う、ただ彼女の近くにいたいだけだ」

「冗談じゃないよ？付き合ってもいないのに、京都に行って何するの？」

「付き合ってから行けばいいじゃん、そうしないと損失が大きすぎるよ！」

「髙橋綾人、一体何を考えているんだ？」

彼は同級生たちのあれこれの忠告を聞きながら、グラスを持ち上げ、中の酒を飲み干した。そしてグラスをテーブルに静かに置いた。しばらくして、ようやく口を開いた：「何も考えていない。ただ彼女の近くにいて、彼女のそばにいたいだけだ。一緒になれなくても仕方ない。どっちにしても、一緒にいようがいまいが、彼女を命をかけて愛し続ける」

ここまで思い出した髙橋綾人は、視線を飛行機の窓の外から、そっと森川記憶の顔に戻した。

少女はまだ眠っていて、長くカールした睫毛が、時々軽く震えていた。

そうだ...命をかけて愛する。

彼女は彼の命をかけて愛する人。

この人生で、唯一の、命をかけて愛する人。

……