第138章 【138】橋本健太失踪3

そう思うと、夏野暖香の顔に幸せの表情が浮かんだ。

しかし突然、彼女の目が輝いた。

そうだ、教会!

「運転手さん、教会へ行ってください!」

「お嬢様……ここには七、八つの教会がありますが、どこへ行きたいですか?」

「郊外に一番近い教会に……一番質素な教会へ行ってください!」

タクシー運転手は振り返り、少し疑わしげに夏野暖香を見た。

「それはかなり遠いですよ。おそらく二時間ほどかかります!」

「構いません、そこへ行きましょう!」夏野暖香は断固として言った。

……

車が少し古びた教会の前に停まった時、すでに夜の9時を過ぎていた。

夏野暖香は車代を払って降りると、教会の入り口の灯りがまだついているのが見えた。

教会の周りには雑草が生い茂り、遠くは真っ暗だった。

ここには、この教会だけがあり、少し陰気に見えた。

夏野暖香は思わず恐怖を感じた。

最終的に、勇気を出して前に進み、灯りの下で「ギシッ」という音と共に教会の大きな扉を押し開けた。

これは100平方メートルに満たない小さな教会だった。

中には一つの灯りがともされ、前方の十字架は特に厳かで神聖に見えた。

夏野暖香の心臓は激しく鼓動していた。

そして彼女の視線が十字架の下に立つ高く細長い影に落ちた時、全身の血が引いていくような感覚に襲われた。

「こんな遅くに誰かが来るとは思わなかった」橋本健太の声は、ひどくかすれていた。

夏野暖香は心臓が一瞬で痛み、息ができなくなるような感覚に襲われた。

橋本健太が顔を上げると、彼が手に酒瓶を持っていることに彼女は気づいた。

彼は頭を後ろに傾け、酒を喉に流し込んだ。

夏野暖香の心は震えた。

しばらくして、橋本健太はゆっくりと振り返った。

深く暗い目が少しずつ夏野暖香の姿に落ちていった。

彼女だと分かった時、彼の目に奇妙な光が走り、視線が微かに揺れた。

しかしすぐに、その光は鏡の中の花や水に映る月のように、消えてしまった。

「君か?」彼のかすれた声には、明らかな信じられないという感情が含まれていた。

「私よ」夏野暖香はうなずき、必死に自分を抑えて取り乱さないようにした。

橋本健太は彼女に微笑んだ。

そして振り返り、酒を飲み続けながら、体はゆっくりと倒れていった。

夏野暖香は急いで前に出て彼を支えた。

二人一緒に床に倒れた。