こんな野蛮で自己中心的な男を、以前の夏野暖香はきっと目が見えていなかったから、彼に恋をしたのだろう。
彼女は死んでもこんな男を愛することはないだろう。
夏野暖香は彼に自分の足を触らせたくなくて、足をどかそうとした。
南条陽凌はしかし、片手で直接彼女のふくらはぎをつかみ、動くのを許さなかった。
温かい大きな手が彼女の足をコントロールしていた。
「動かないで、傷口に気をつけて」彼は突然声をやわらかくし、彼女が眉をひそめるのを見て、思わず頭を下げ、彼女の傷口に向かって、ふっと息を吹きかけた。
冷たい風が吹き付け、夏野暖香は確かに痛みが少し和らいだと感じた。
眉間もわずかに緩んだ。
彼にこうされると、さっきまでの悲しいことも忘れかけていた。
ただ彼に腹を立てることだけに気を取られていた。
南条陽凌はしゃがんでいて不快だったので、思い切って片足を地面につき、もう片方の足は膝を曲げて地面を支えた。
そんな卑屈な姿勢は、南条陽凌が以前には決してしたことのないものだった。
今回は、しかし知らず知らずのうちに、そうしていた。
さらには夏野暖香の少し和らいだ表情に、微笑みさえ浮かべていた。
端正な顔に、少し生気が戻っていた。
「どう?私がやるのは医者よりも気持ちいいだろう?」
夏野暖香の顔が曇った。
この男は、本当にいつでもどこでも自惚れている。
しかし南条陽凌の動きは、確かに医者よりもずっと優しかった。
この男は、何に取り憑かれたのか分からない。
彼がいなければ、彼女はどうして怪我をしただろうか?
今や苦しみを味わい、外傷に内傷、すべては彼が引き起こしたものだ。
そして今は親切な振りをして彼女の世話をしている。
夏野暖香は口をとがらせた。
南条陽凌は綿棒を持ち、傍らの医者の指示に従って、ヨードチンキをつけ、それから薬の粉を少しつけて、彼女の傷口に塗った。
彼の動きはとてもゆっくりだった。
薬を塗りながら、同時に軽く口で彼女の傷口に息を吹きかけていた。
顔が彼女の足に近づくと、明らかに彼の熱い息がふくらはぎに当たるのを感じた。
夏野暖香はこうして、かすかな痛みと、わずかな涼しさ、そして熱い息を感じながら。
彼が薬を塗り終えるのを見ていた。
そして医者が教えた方法通りに、細心の注意を払って彼女の足を包帯で巻いてくれた。